連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


「棚卸し」は、資産を把握するための大切な作業

「クローゼットを開くと、同じような色や形の服ばかりならんでいる」

「大掃除のたびに、ほとんど着たことのない服を引出の奥から発見する」

そんな経験はありませんか?

服に限らず、

「読んでいない本が山積みだ」

「食べきれない量の食材が冷蔵庫に入っている」

など、自分が何を持っているか管理しきれていないという人は意外と多いと思います。そして逆に、モノがあふれている割には、

「今日来ていく服がないな」

「冷蔵庫に食べたいものがない」

などと不足を感じ、新しいものを購入することで解決しようとしてはいませんか?

企業では、少なくとも年に1回、棚卸しという作業をします。棚卸しとは、商品や原材料などの在庫の数量を実際に数えて確かめること。

もちろん、商品や原材料を仕入れたときも、売れたときや使ったときも、帳簿に記録しています。そのため、帳簿を見れば、在庫がどれだけあるかわかるようになっています。

でも、記録のミスや、紛失、盗難など、帳簿が必ずしも実体と合っているかわかりません。そこで実際に数えて、帳簿を実体に合わせることになります。

商品だけではなく、パソコンや社用車、設備などの固定資産についても、調査をすることがあります。パソコンや設備であっても、実体と帳簿が異なっていることがあるのです。 資産を管理するということは非常に大変なこと。棚卸しは、資産を把握するための大切な作業なのです。

「棚卸しで資産をきちんと管理する」「資産を有効活用する」は個人にも有効

なお、実物と帳簿を照らし合わせることが一番の目的ですが、在庫の今後の販売可能性や不要な資産の見極めにも有効です。

不要な資産を持っていることは経営上良いこととはいえません。倉庫代を含めて管理費用がかかるからであるのはもちろんのこと、資産を活用して利益を生んでこその経営だからです。

結局、持っている資産をきちんと利用し、利益を生んでいくことが大切なのです。

持っている資産からどれだけの利益を生み出しているか、その指標を総資産利益率(=利益÷資産総額)といいます。この資産利益率が高いことは、良い経営として評価される1つの要素となります。

企業と個人は必ずしも同じとは言えませんが、

(1)棚卸しなどにより資産をきちんと管理する

(2)資産を有効活用する(本当に不要な資産は処分する)

という視点は、個人にも応用できるのではないでしょうか。

特に、安易に新しいものを手に入れようとするのではなく、今、何をもっているのかを把握することから始めてみるのは大切だと思います。

自分は何を持っているのか、じっくりと向き合ってみれば、意外な才能に気付くことだってあるかもしれません。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。