連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。
「給与明細」や「源泉徴収票」を見せてくれた父親
先日、士業仲間(税理士さんや社会保険労務士さんなど)とご飯を食べているとき
「子供の頃、親の年収を知っていたか」
ということが話題になりました。
みなさんは、子供の頃、親の年収を知っていましたか?
私はというと、実は子供のころから詳細に知っていました。
正確な記憶ではありませんが、小学校の高学年くらいからは、親の年収を知っていたと思います。
私の父は、給与明細や源泉徴収票をそのまま見せてくれました。そして説明してくれました。
額面はこれ、源泉はこれ、社会保険はこれ、といった具合に。
そして、毎年、年収がどれくらいあって、手取りがどれくらいで、生活費がいくらで、習い事がいくら、という、いわば家計の「決算発表」が行われていました。
単に結果を発表するのみならず、
「お父さんが死んだ場合には、ローンはこうなって、生命保険はああなって……」
と不測の事態が生じた場合の対処まで、すべて、説明がありました。
ついでに、
「うちの家計の状況では、私立の学校に行くのは無理だからそのつもりで」
とも言われてきました。
子供のころから、ごく普通にそのような環境で生活してきましたので、家族でお金の話をすることに、今でもまったく違和感はありません。
「お金のことを知らずに育ってしまったら、大人になってどうするのだろう?」
でも、多くの家庭では、そのようなお話はしないみたいですね。
大人になって、
「子供の頃、親の年収なんて知らなかった」
という人がほとんどで、自分が少数派だったと知ったときは、けっこうショックでした。
なぜなら、お金のことを知らずに育ってしまったら、大人になってどうするのだろうと思ったからです。
自分の家庭の生活水準が、どのくらいの年収があれば成り立つのかわからなければ、どのくらい稼げばいいかもわかりません。
自分が出た学校の学費を知らなければ、子供にどのような教育を受けさせてあげられるのかもわかりません。
もちろん、予算で教育内容を決めるわけではありませんが、持っている以上のお金を使えない以上、予算という制約はつきまとうもの。
貨幣経済社会に生きている以上、「金額」というのは、考えなくてはならない要因の一つです。
「お金のことは気にするな」は、ある種の無責任!?
「お金のことは気にするな」
という親心もわかりますが、もしかすると、それはある種の無責任なのかもしれません。
年収を赤裸々に公表するかどうかはともかく、お金のことを気にしなくていいのは、本当にありあまるお金を持っているお金持ちだけでしょう。
子供がお金のことを「心配」する必要はないと思います。
でも、気にせず好き勝手にはできないはずです。
お金について考えるということ自体は、決してネガティブなことではありません。
「金額」「価格」という事実がそこにあるだけです。
高い、安い、もっとお金があれば、といった意味付けは、人が勝手にしていることなのです。
そう考えると、お金の話題に日常から当たり前に触れていれば、拝金主義でもなく、ネガティブになることもなく、何かを考えるための材料の一つ、道具の一つとして付き合えるようになるのではないでしょうか。
余談ですが、私は今でも、親の収入を把握しています。
おおよその年金額も知っています。
財産の状況もだいたい知っています。
聞きもしないのに報告してくれます(笑)
でも、知っていると本当に安心できます。
万一、老後資金が足りないことがわかれば、私の方でその分も貯めておくなどの、早めの対処だってできますからね。
日常会話の一環で、お金の話までしっかりできるありがたさ。
士業仲間とのふとした会話の中で、それをあらためて感じたのでした。
(※画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 平林 亮子
公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。