特集「新入社員マネーA to Z」では、新入社員の皆さんにお伝えしたいお金の話をリレー形式でご紹介します。
給与明細の読み方、わかりますか?
元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな言葉は「増税」です。
新社会人の皆様。研修が終わって、配属先でお客様扱いされている頃でしょうか。それとも、まだ研修中で色恋に励んでいるでしょうか。
4月の給与をもらうと、いままでアルバイトをしていたときと違って、未知の税金や保険料が引かれていて驚くかもしれません。給与明細を上司に見せて「これは何ですか」と聞くなど愚の骨頂です。この記事を読めば、すべてを理解することができますよ。
給与明細は「勤怠」「支給」「控除」を見る
給与明細を見ると、大きく分けて「勤怠」「支給」「控除」に分けられていると思います。
(1)勤怠
出勤日数や欠勤日数、時間外労働数いわゆる残業の時間が記載されています。
(2)支給
あなたがもらうお金です。基本給や残業代、通勤手当などの各種手当の金額が記載されています。
(3)控除
健康保険料、厚生年金、雇用保険、介護保険料、所得税、住民税といった、給与から天引きされるものが記載されています。
控除について
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料は合わせて「社会保険料」と言われることがあります。「社会保険払ってる?」と聞かれたら、年金や健康保険のことを指していることが多いようです。新社会人の方は、介護保険料を支払わなくて大丈夫です。40歳以上の方が負担するものだからです。
健康保険は、医療を受けたときにあなたの支払いが3割になったり、病気やけがで仕事を休んだときに疾病手当金をもらったり、医療費が高額になったときに払い戻してくれたりする制度です。
厚生年金は、あなたが65歳になってから受け取る年金のための支払いです。「65歳になったら本当にもらえるんですか」という質問に答えることはできません。ぼくにも偉い人にも分かりません。
雇用保険は、「失業保険」とも呼ばれます。失業したときに再就職の支援を受けるための制度です。
給与から天引きされる主なものは、以上の保険料か、税金です。税金は、所得税と住民税になります。所得税とはあなたの「所得」にかかる税金です。所得とは、会社員の場合、会社がくれた「給与」から「給与所得控除」を引いた金額です。
・給与所得控除……あなたの給与の金額によって変わる、所得を減らしてくれる制度。給与所得控除が多いほうが、あなたの所得税は減る。
所得税の税率は「累進課税」になっていて、その税率は現在5%~45%です。新社会人の方は、おおむね、5%か10%、高い人でも23%くらいにとどまるのではないでしょうか。給与から所得税を天引きすることを「源泉徴収」といいます。
源泉徴収を拒否することはできません。あなたがどんなに文句を言っても会社は源泉徴収をやめてくれませんし、「自分で確定申告をするから源泉徴収は必要ない」と主張しても源泉徴収は行われます。法律で決まっているからです。
毎月の給与に対して、いくら源泉徴収するかは、扶養家族や配偶者の有無によっても異なりますが、ちょっと多めに天引きしていて、12月になると一部を還付してくれます。これが「年末調整」という手続きです。12月は賞与もありますし、年末調整もあるので、懐が乳液を塗った肌のように潤うことでしょう。
あなたが就職して2年目の6月になると、住民税の支払いも発生します。住民税は、前年の所得に対してかかるものなので、所得税より1年遅れます。住民税の税率は10%なので、2年目は1年目より手取りが減る方がほとんどです。就職する前に、たくさんアルバイトをしていた方は、社会人1年目でも住民税がかかることがあります。
基本的には、社会人1年目の4月から所得税が、5月から社会保険料が、2年目の6月から住民税が、給与から天引きされることになります。あなたを雇っている会社側が、計算ミスをすることはほとんどありません。あなたが給与明細を見て「あれ、控除の金額おかしいな、所得税の金額おかしいな」と思っても、杞憂です。もし、総務や経理や上司に言うならば、一度、制度を調べてみると良いですよ。
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