特集「新入社員マネーA to Z」では、新入社員の皆さんにお伝えしたいお金の話をリレー形式でご紹介します。

アルバイトと会社員の給与明細は異なる

フレッシュマンのみなさん、入社おめでとうございます。学生時代もアルバイトをしていれば給与明細は見たことがありますよね。でも学生時代のアルバイトの給与明細と、会社員になってからの給与明細ではいろいろなところで違いがあります。

これから先、毎月給与明細を見るわけですが、そこにはみなさんの生活設計に関する多くの情報が盛り込まれています。稼いだお金がどのように流れるのかしっかり意識しましょう。

「総支給額=手取り」ではない

学生時代には100万を超えるほどがっつりアルバイト収入を得る人はそれほど多くはなかったかももしれません。月に5万円稼いでいた場合、給与明細では収入金額の記載があるくらいで差し引かれているものはなかったはずです。つまり「総支給額」だったわけです。これが会社員として受け取る給与明細は、記載されている項目が多くなっていることに気づくでしょう。まず給与明細の作りを見ていきましょう。

  • 給与明細の主な構成

給与明細は大きく(1)勤怠状況、(2)支給項目(もらえるもの)、(3)控除項目(差し引かれるもの)で構成されています。また支給項目は主に「基本給」と「手当等」「交通費」で構成されています。手当には「役職手当」「家族手当」「資格手当」「残業手当」などがあります。これらもらえるものをすべて合計した金額が「総支給額」です。

一方控除項目は主に「社会保険料」「所得税」「住民税」や「天引きされるもの」があり、これらを合計した金額が「控除額合計」となります。天引きされるものには「財形」「持ち株会」「組合費」「住宅ローン返済」「生命保険料、損害保険料」などがあります。

なお、手当や天引きされるものは企業によって多少違いがあります。

そして「総支給額」から「控除額合計」を差し引いたものを「差引支給額」といい、これがいわゆる手取りとなります。つまり「総支給額=手取り」にはならないのです。

税金・社会保険料は意外と大きい

社会保険料は学生時代にはあまり馴染みがなかったでしょう。社会保険とは病気やけが、出産、死亡、老齢や障害となったときに一定の給付を行い、生活の安定を図ることを目的とした公的な保険で、強制加入となっています。

健康保険料、介護保険料(40歳以上が加入なので40歳未満は徴収されません)、厚生年金保険料などがそれに当たりますが会社員の人は毎月給与から天引きされます。健康保険料や厚生年金保険料などは定率なので、給与がアップすれば保険料も上がっていく仕組みです。ただし新入社員の場合、社会保険料の控除は5月の給与からとなります。

所得税は「総支給額-非課税範囲内交通費-社会保険料」の金額に課税されます。なお住民税は前年の所得に対して計算され、それが翌年の6月から天引きされていきます。つまり新入社員のみなさんは、2019年の5月まで住民税は天引きされません。

さらに今年の所得というのは4月から12月までの分なので少なめの所得であり、2019年6月から天引きされる住民税も少なめです。しかし2019年はフルに1年分の所得がありますから、一気に所得がアップします。それに連動して2020年6月からの住民税もグンとアップするので手取りは意外と増えないかもしれません。

  • 住民税納付のイメージ

生活設計の習慣作りは最初が肝心

このように、4月の給与は初任給ですからそれほど高いわけではないものの、控除されるものも少ないため総支給額と差引支給額がそれほど大きな差はありません。しかし5月以降、来年、再来年と控除額が増えていくので、初任給を使い切っていては、その後の生活で貯金もままならない家計となってしまいます。

給与明細にもありますが、財形制度が会社にあれば、まず加入して天引き貯蓄される仕組みを作ってしまいましょう。そうすれば給与明細を見て、毎月確実に貯金できていることも実感できますよ。

鈴木暁子

鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。