長らく低性能・低価格モデルが主流となり、人気も低迷していたAndroidタブレット。ですがここ最近、再び各社から高性能モデルが投入されるようになっています。その背景には何があるのでしょうか。
レノボやシャオミが高性能モデルを投入
かつてはスマートフォンと同様、各社からさまざまな製品が相次いで投入され大きな盛り上がりを見せたタブレット端末。ですが、Webや動画の視聴以外に需要が広がらず低価格化が加速したこと、そしてスマートフォンの大画面化によって需要が浸食されたことなどもあって撤退するメーカーが相次ぎ、タブレット市場は急速に停滞することとなりました。
実際、現在の国内におけるタブレット市場の状況を見ると、ビジネスや教育などに市場を広げたアップルの「iPad」シリーズの独壇場といっていい状況にあります。iPad以外に存在感を示しているのは、非常に安い価格と自社コンテンツとの連携で人気を獲得したアマゾン・ドット・コムの「Fire」シリーズくらい。いずれも独自OSを採用しており、かつて多く見られたAndroidを搭載したタブレットの存在感は大幅に低下しています。
もちろん、国内でもAndroidタブレットは継続的に投入されていますが、性能が低くて低価格を重視したものが主流。それには、かつて高性能のAndroidタブレットを積極投入していたファーウェイ・テクノロジーズが米国からの制裁によってAndroidを採用できなくなり、独自OSに切り替えたことも大きく影響していますが、いずれにせよコンシューマー市場でAndroidタブレットの存在感がほとんどなくなっているのは確かでしょう。
ですがここ最近、その状況を大きく変えるべく、性能の高いAndroidタブレットを国内市場に投入する動きが相次いでいます。それをけん引している企業の1つが、Androidタブレットを継続的に投入してきたレノボ・ジャパンとその傘下のNECパーソナルコンピュータです。
レノボ・ジャパンは、2022年1月28日に12.6インチのディスプレイを搭載したAndroidタブレット「Lenovo Tab P12 Pro」を発売していますが、ディスプレイ素材に有機ELを採用し、チップセットにはハイエンドスマートフォン向けの「Snapdragon 870」を搭載するなど、非常に高い性能を誇ります。NECパーソナルコンピュータも、同じ性能を持つ「LAVIE Tab 12」の発売を2022年2月1日に発表しています。これまでタブレットでは低価格路線を貫いてきた両社が、一転してハイエンドタブレットに力を入れてきていることが分かります。
もう1つがシャオミです。シャオミは2019年の日本市場参入以降、日本でのスマートフォン販売を急拡大していますが、2021年10月にはAndroidタブレット「Xiaomi Pad 5」の販売を開始。こちらもチップセットにSnapdragon 860を搭載する一方、4万円台の低価格で販売するなど、シャオミらしいコストパフォーマンスの高さで注目を集めました。
【お詫びと訂正のお知らせ】初出時、Xiaomi Pad 5のチップセットをSnapdragon 870と記載していましたが、正しくはSnapdragon 860でした。該当箇所を修正しました。お詫びして訂正します。(2021年2月10日 21:30) |
コロナ禍が大きく影響、課題はアプリ
ですが、大画面化が進むスマートフォンにタブレットが市場を浸食されている状況は大きく変わっていません。それだけに、なぜいま再びハイエンドのAndroidスマートフォンを国内投入する動きが相次いでいるのか?という点には疑問を抱くところです。
各社の説明によりますと、その背景にあるのはコロナ禍のようです。コロナ禍では緊急事態宣言の発令などにより、多くの人が外出せず自宅で過ごすことが求められ、結果として自宅でコンテンツを楽しんだり、リモートワークをしたりするニーズが増えています。自宅での生活を快適にするため、スマートフォンよりも画面が大きいタブレットのニーズが再び拡大してきており、それに応えるべく性能の高いタブレットを投入する動きが拡大したようです。
ですが、動画視聴などであれば低性能のタブレットでも十分応えられることから、各社が力を入れているのはどちらかといえば、高い性能を生かして仕事やクリエイティブ用途に活用の幅を広げることのようです。実際、先に紹介した3機種はいずれも、付属または別売りのペンを活用したペン操作に対応していますし、Lenovo Tab P12 ProやLAVIE Tab 12はキーボードを装着しての利用が可能で、ビジネスやクリエイティブ用途での活用を強く意識している様子がうかがえます。
タブレットをビジネスやクリエイティブの用途で活用するという施策は、これまでアップルがiPadで力を入れてきました。それだけに、Androidタブレットでも同様の流れが広まれば、再びハイエンドモデルの市場が活性化することになるかもしれませんが、そこで課題になってくるのがアプリです。
Androidは、高性能のタブレットが販売されない時期が長く続いたこともあって、iPadと比べるとビジネスやクリエイティブ関連アプリの充実度が低いというのが正直なところ。ハード側の体制が整っても活用の範囲が限定されてしまうのが、どうしても気になってしまいます。
それだけに、ハイエンドAndroidタブレットの本格的な復活には、ハードだけでなくアプリ側の対応が不可欠でしょう。Androidを開発するグーグルがタブレットにあまり力を入れなくなっているだけに、メーカー側がいかに音頭を取ってアプリ開発者と協力し、その充実度を高められるかが勝負どころになるのではないでしょうか。