ドコモショップでの契約やサポートをカットすることで、大幅な低価格化を実現したNTTドコモの新料金プラン「ahamo」ですが、契約などをドコモショップで有償サポートする「ahamo WEBお申込みサポート」「ahamo WEBお手続きサポート」の導入を4月22日に発表しています。なぜ、オンライン専用だったahamoに、ドコモショップでのサポートを追加する必要が出てきたのでしょうか。

ahamo利用者に有償で手続きをサポート

携帯各社の新料金、とりわけ注目を集めたオンライン専用プランがサービスを開始して1カ月が経ちました。なかでも、NTTドコモの「ahamo」の注目度は非常に高かったようで、受付開始直後からSIMカードの配送が間に合わなくなり、番号ポータビリティ(MNP)による転入の受付を一時停止するなど、大きな混乱も見られました。

現在ではそうした混乱も落ち着きつつあるようですが、そのahamoに関して新たな動きが出ています。それは4月16日、総務省が実施した「競争ルールの検証に関するWG」の第16回会合で、NTTドコモが有償による店頭でのサポートサービスを後日発表する予定であることを明らかにしたことです。

  • 「競争ルールの検証に関するWG」第16回会合のNTTドコモ提出資料より。この時点で、ahamoユーザー向けに有償での店頭サポートを提供することが明らかにされていた

さらに4月22日、同社は「ahamo WEBお申込みサポート」と「ahamo WEBお手続きサポート」の提供を開始すると発表しました。これらは、いずれもahamoユーザーに対して、ドコモショップでのサポートを有償(1回あたり3,300円)で提供するもの。前者はahamoの申し込み、後者は各種手続きの申し込みをサポートするサービスとのことです。

ただ、これらのサービスは、スタッフがahamoでの申し込みや手続きに関する操作画面を見て、必要に応じて操作の仕方を案内するものになるとのこと。他のNTTドコモの料金プラン利用者向けに提供される手厚いサポートとは異なり、あくまでahamoの利用を補助し、オンラインでの手続きに慣れてもらうことを目的としたサービスとなるようです。

とはいえ、NTTドコモはこれらサービスの提供によって、ドコモショップでのサポートをしないことが大きな特徴にもなっていたahamoの方針を、短期間で大きく変更したことになります。なぜ、NTTドコモはそのような判断を下すに至ったのでしょうか。

他社サブブランドへの流出を抑える狙いも

1つはやはり、ahamoを契約した人からドコモショップでのサポートを求める声が多く挙がったからではないかと考えられます。ahamoは、スマートフォンを使いこなす20代に向けたオンライン専用プランという位置付けであり、あくまでスマートフォンの使い方に慣れた人向けのサービスではあるのですが、あまりに大きな評判を呼んだためターゲット外の人からも高い関心が寄せられるようになっていました。

しかも、そうした人たちのなかには、必ずしもスマートフォンの使い方に詳しくない人が少なからずいたようで、サービス開始当初からリテラシーの低さが影響してのトラブルが報告されていたのも確かです。そこでNTTドコモは、そうしたユーザーの声に応えて利用者を増やす方が得策と判断し、ahamoのコンセプトを大きく変えることなく、ドコモショップで最小限のサポートを有償で提供するに至ったといえるでしょう。

そしてもう1つ、大きな狙いとして考えられるのは、競合他社のサブブランドに対抗する狙いです。先のように、スマートフォンに詳しくないけれど携帯電話料金を安くしたい…と考える人向けの受け皿として、KDDIは「UQ mobile」、ソフトバンクは「ワイモバイル」というサブブランドによるサービスを提供しています。これらは料金が安いだけでなく、メインブランドほどではありませんが店頭でのサポートも受けられる安心感で人気を博しています。

  • ソフトバンクはメインブランドの「ソフトバンク」とサブブランドの「ワイモバイル」、オンライン専用の「LINEMO」があるが、NTTドコモにはサブブランドに位置するサービスがない

ですが、NTTドコモはそうしたサブブランドを持っておらず、新しい料金プランを見ても「5Gギガホ プレミア」などの大容量で高額なプランと、オンライン専用のahamoしか選択肢がありません。低価格サービスの受け皿としては、グループのNTTコミュニケーションズが提供する「OCNモバイルONE」も用意されていますが、こちらもahamoと同様に店頭での契約やサポートはなく、サポートを重視する人の受け皿にはなり得ません。

それゆえ、新料金プランが打ち出されなかった「ギガライト」などを契約している、低価格と充実したサポートの両立を求める人たちがNTTドコモやそのグループ内で料金をお得にする術がなく、他社のサブブランドへの流出が懸念されています。そうしたことから、オンライン専用のahamoに店頭でサポートできる術を用意して安心感を与えることで、ギガライトなどの利用者をそちらに誘導して他社に流出するのを防ぐ狙いもあるといえそうです。

  • データ通信が少ない人に向けた「ギガライト」は、新料金プランによる料金引き下げが打ち出されていないため、その利用者がサポートの充実と低価格を求めて他社サブブランドへ流出することが懸念されている

ahamoを打ち出して若い世代の流出を抑えることに成功したNTTドコモにとって、目下の課題はギガライトやそれ以前のプランを契約している、小容量・低価格ながら充実したサポートを求める人たちの処遇といえるでしょう。とりわけ、年配層の契約が多いNTTドコモはそうしたユーザーを多く抱えているとみられるだけに、知名度のあるahamoを生かして有料サポートでターゲットを広げることがその解決策となるのかは、重要なポイントになってくるといえそうです。