KDDIの「au」ブランドとソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドが相次いで新しい料金プランを発表しました。auの「auマネ活プラン」は金融サービスとの連携でお得になるプラン、ワイモバイルの「シンプル2」は王道の料金プランのリニューアルと、内容にはかなりの違いがありますが、一方でどちらも戦略的には共通している部分があるようです。

auは「マネ活」、ワイモバイルは王道プランに

2022年は動きが少なかった携帯各社の料金プランですが、一転して2023年は各社が相次いで料金に関する大きな動きを見せています。そして新たに2023年8月23日、KDDIとソフトバンクの2社が相次いで新料金プランを発表しています。

ですが、その内容にはかなりの違いがあるようです。まずKDDIの新料金プランですが、こちらはメインブランドの「au」向けとなる「auマネ活プラン」になります。

その内容は名前の「マネ活」に現れているように、この料金プランと、KDDI子会社のauフィナンシャルホールディングスの系列企業が提供している各種金融・決済サービスとセットで契約することでお得に利用できるプランになります。具体的には「au PAYカード」と「auじぶん銀行」を契約し、そのいずれかで通信料を支払うことで、最大月額800円相当の還元が得られるものになります。

  • auの新料金プラン「auマネ活プラン」。系列の金融・決済サービスとセットで利用することでお得になる仕組みだ

それに加えて、「au PAYゴールドカード」を契約していれば1年間通信料金の還元が10%上乗せされたり、auじぶん銀行の金利優遇が受けられたり、「auカブコム証券」でau PAYカードで決済をした時のポイント還元が上乗せされたりするなど、系列の金融・決済関連のサービスを利用した時に多くの特典が得られます。

  • auマネ活プランの概要。「au PAYゴールドカード」を契約することで多くの特典が得られる点も大きなポイントとなる

一方で、ベースとなっている料金プランは「使い放題MAX」などの高額な使い放題プランであり、「家族割プラス」の人数にはカウントはされるが割引は適用されない、年11,000円の会費がかかるau PAYゴールドカードを契約しないとすべての特典が得られないなど、ハードルが多く利用者を選ぶプランであることも確かです。

一方、ソフトバンクの新料金プランは、サブブランドの「ワイモバイル」向けとなる「シンプル2」になります。これは、ワイモバイルの従来プラン「シンプル」のリニューアルを図ったもので、通信量に応じ「S」「M」「L」の3プランを提供する分かりやすさは維持されています。

  • ワイモバイルの新料金プラン「シンプル2」。分かりやすいS・M・Lの3段階プランという特徴は維持しながらも、近年の通信トラフィック増加を受け、通信量の増量がなされている

大きな変化の1つは通信量で、Sプランは3GBから4GB、Mプランは15GBから20GB、Lプランは25GBから30GBへとそれぞれ通信量が増えていることが分かります。その一方で、月額基本料金はSプランで187円、Mプランで737円、Lプランで957円それぞれ値上がりしています。

それゆえもう1つ、割引施策にも変化が加えられており、「SoftBank光」「SoftBank Air」などとのセット契約で適用される「おうち割 光セット(A)」の割引額が、M・Lプランでは月額1,650円に増額されています。また、「PayPayカード」を契約することで適用される「PayPayカード割」が新たに追加され、これを適用すると月額187円の割引が受けられます。

それらの割引をすべて適用した時の料金をシンプルと比べた場合、その差額はS・Mプランで88円、Lプランで308円にまで縮小します。さらに、M・Lプランは月あたりの通信量が1GB未満の場合にも割引を受けることができ、Sプランと同じ1,078円で利用できるという施策も用意されています。

  • シンプル2の詳細。基本料金が上がった分、新たに「PayPayカード割」が追加されるなど、割引施策の充実が図られている

携帯電話会社のビジネスに欠かせなくなった「経済圏」

このように、両プランは提供するブランドが違うこともあってまったく内容が異なるのですが、実は共通点もあります。それは、両社がともに「経済圏」を強く意識していることです。

経済圏とは、通信や決済、ポイントなど強みを持つサービスを軸として、自社系列のサービスを複数利用することでお得になる施策を展開し、顧客を囲い込むビジネス手法のこと。代表的なものとしては、「楽天ポイント」を軸とした楽天グループの「楽天経済圏」が挙げられますが、ここ数年来携帯大手3社は、この経済圏ビジネスに非常に力を入れているのです。

その理由は、携帯電話サービスで獲得した1千万単位の顧客基盤を持つことから、もともと経済圏ビジネスを展開しやすい土壌を持っていたため。加えて、携帯電話市場の飽和や、政府による携帯電話料金の値引き要請などもあり、本業の携帯電話事業で売上を伸ばすのが難しくなったことから、経済圏ビジネスに一層力を注ぐようになっているのです。

  • KDDIはauマネ活プランの提供に際して、同社が強みを持つ金融サービスに重点を置いた「マネ活経済圏」を訴えている

実際、ソフトバンク系列のスマートフォン決済サービス「PayPay」に代表されるように、ここ数年来携帯各社は金融・決済サービスの展開に力を注ぐようになっていますが、これも周辺ビジネスを増やし経済圏を拡大する狙いがあります。そして、今回の2社の料金プランは、いずれもこの金融・決済サービスの拡大に携帯電話サービスを活用しようという狙いが見て取れます。

KDDI系列のクレジットカードや銀行などとのセット契約が求められるauマネ活プランはその最たる例ですし、シンプル2も従来のプランにはなかった「PayPayカード割」が追加されており、PayPayカードの契約拡大につなげようとしていることが分かります。

  • ワイモバイルのシンプル2でPayPayカード割が追加されたのは、PayPayカードの契約を伸ばす狙いも大きい

そして、こうした携帯電話料金プランの変化からは、携帯電話サービスがもはや通信だけの競争ではなくなっており、複数のサービスにまたがった競争となっていることが分かるでしょう。それだけにユーザー側も、お得に利用するには各社の経済圏ビジネスを意識した使い方をする必要がありそうです。