英国に拠点を持つスマートフォンメーカーのNothing Technologyは2023年7月12日、スマートフォン新機種「Nothing Phone(2)」の提供を発表しました。背面が光る「Glyph Interface」の特徴はそのままに、ミドルハイからハイエンドへと性能を大きく向上させながらも価格は79,800円と、円安が進む昨今にあっては比較的安く抑えられています。そのようにポイントの多いNothing Phone(2)ですが、課題も感じられました。

光る背面の活用シーンが拡大

2022年に発売され、背面が光る「Glyph Interface」を搭載するなどデザイン性に重点を置いたスマートフォンとして注目を集めた、Nothing Technologyのスマートフォン「Nothing Phone(1)」。とりわけ日本では、デザインにこだわりながらも値段の高さで批判を集めたバルミューダの「BALMUDA Phone」が近いタイミングで投入されていただけに、その対比としても注目された部分もありました。

そのNothing Technologyが日本時間の2023年7月12日、次世代モデルの「Nothing Phone(2)」を発表。こちらもGlyph Interfaceを搭載するなどNothing Phone(1)のコンセプトを踏襲していますが、さまざまな部分で進化を遂げたモデルとなっています。

  • Nothing Technologyのスマートフォン新機種「Nothing Phone(2)」。光る背面などのコンセプトはそのままに、さまざまな強化がなされている

その進化ポイントの1つはGlyph Interfaceです。Nothing TechnologyはGlyph Interfaceを、スマートフォンとのインタラクション(操作)を最小限に抑えるものと位置付けており、見た目が派手であるにもかかわらず利用シーンは着信時や充電中、カメラでの撮影時などかなり限定され、カスタマイズもあまりできないのが不満点といえました。

ですが、Nothing Phone(2)ではそうした声を受けてか、Glyph Interfaceの用途をより広げることに力を入れています。「Uber」など外部アプリとGlyph Interfaceを連携させる取り組みなども進められていますが、より注目されるのは「Glyph Composer」ではないでしょうか。

これは、簡単なパッド操作でGlyph Interfaceを光らせる着信パターンを簡単に作成できるもの。Nothing Phone(1)では、Glyph Interfaceを自由に光らせる仕組み自体が存在しなかっただけに、ユーザー好みに光らせる仕組みが用意されたことは大きな進化ポイントといえます。

  • Nothing Phone(2)で新たに搭載された「Glyph Composer」。画面上のパッドをリズムよくタップすることで、背面が光る着信パターンを簡単に作成できる

そしてもう1つ、大きな進化となるのがインターフェースです。Nothing PhoneシリーズはAndoridにカスタマイズを加えた「Nothing OS」を搭載していますが、Nothing Technologyはシンプルさを追求し機能的には純粋なAndroidに近い内容であることを重視していることから、その存在感はあまり大きいとは言えませんでした。

ですが、Nothing Phone(2)に搭載された新しい「Nothing OS 2.0」では、新たにNothing Phoneらしいデザインを取り入れたウィジェットを複数用意するのに加え、アプリアイコンをNothing Phoneの雰囲気に合わせてモノクロ化する仕組みも用意。よりデザインの統一感を重視した内容となっていることが分かります。

  • 「Nothing OS 2.0」では新たに、Nothing Phoneのデザインに合わせたウィジェットを多数用意するほか、アイコンをモノクロにする仕組みも取り入れ、よりデザインの統一感を高めている

フォントから見えるローカライズの課題

加えてNothing Phone(2)では、事前に公表されていた通り、チップセットにクアルコム製の「Snapdragon 8+ Gen1」を搭載。最新の「Snapdragon 8 Gen2」と比べれば性能は落ちますが、それでも2022年後半のハイエンドモデルに多く搭載されていたチップセットだけに、性能はかなり高い部類に入ります。

しかも、Nothing Phone(1)が搭載していたのはミドルハイクラスの「Snapdragon 778G+」であったことを考えると、Nothing Phone(2)は性能が大幅にアップしたといえるでしょう。それでいて、型落ちのチップセットを搭載していることもあってか価格のリーズナブルさは維持しており、最も安いRAM8GB、ストレージ128GBのモデルで79,800円と、Nothing Phone(1)と比べれば値段が上がっているとはいえ、昨今の値上げラッシュの中にあってはコストパフォーマンスが高いといえます。

  • Nothing Phone(2)はチップセットに「Snapdragon 8+ Gen1」を採用。1世代前のチップセットながら、性能的にはハイエンドに格上げしている

そうしたことからNothing Phone(2)は、Nothing Phone(1)ほどインパクトこそ大きくはありませんが、洗練が進んだ正当進化のモデルといえるでしょう。規模の違いはありますが、バルミューダが1モデルでスマートフォン事業からの撤退に至ったことを考えると、デザイン性を主張しながらもスマートフォンとしてあまり無理をしない仕様設計とするなど、スマートフォンのビジネスに長く携わっているメンバーが多いという経験が、同社の新機種投入にも生かされたといえそうです。

ですが、Nothing Phone(2)に触れてみると、まだ不満要素が少なからずあるというのも正直なところです。とりわけ気になるのが、ローカル市場に向けた対応でしょう。

日本市場に向けた対応となると、防水やFeliCaに対応していないことが真っ先に挙げられますが、Nothing Technologyは注目が高いとはいえまだ規模が小さい事業者だけに、ハードウェア面でローカルニーズをくみ取るには時間がかかるでしょう。それよりも筆者が気になったのはデザイン、より具体的に言えばフォントです。

Nothing Phone、ひいてはNothing Technologyは、ドット調の独特なフォントを製品に多く用いており、それが同社の大きな特徴となっています。それゆえ、Nothing Phoneシリーズのフォントにも英字にはドット調のフォントが用いられているのですが、そのフォントのローカライズが進んでいないのが気になります。

実際、Nothing Phone(1)では、ドット調の英字フォントと通常の日本語フォントが混在していて違和感がありました。それを受けてか、Nothing Phone(2)では日本語に設定すると英字フォントも通常のフォントとなってしまい、日本語フォントのデザインカスタマイズがなされていないことに残念な印象を受けてしまいました。

  • Nothing Phone(2)では日本語にすると、日本語だけでなく英字もNothing Phoneらしいドット調のフォントではなく、通常のフォントになってしまう

Nothing Technologyでは、日本が大きな市場であり、重要性が高いことから力を入れていく方針を示していますが、一方で日本は非英語圏であり、ローカライズの面でも非常に難しさのある市場でもあります。日本市場に重点を置き販売を拡大しようとしているのであれば、今後いかにローカライズに力を注ぐかが、非常に重要になってくるでしょう。