NTTドコモが新料金プラン「ahamo」の料金を、サービス開始前に280円引き下げて月額2,700円で提供すると発表、話題となっているようだ。だがahamoは料金だけでなく、発表後から細かな内容を変更したり、対応が間に合っていないと感じさせる施策を打ち出したりするケースが多い。なぜだろうか。

不自然なドコモオンラインショップでの端末購入フロー

2021年2月18日に、ソフトバンクがオンライン専用プランの正式名称「LINEMO」を発表したことで、携帯大手各社の新料金が出揃ったことから、後は3月の提供を待つだけという状況下の2021年3月1日。NTTドコモが突如記者説明会を実施し、ahamoの料金を月額280円引き下げ、月額2,700円で提供すると発表して大きな驚きをもたらしているようだ。

同社の説明によると、その背景には、ahamoで標準付属する1回5分の無料通話を巡る、他社の動向が影響しているという。というのもKDDIの「povo」が1回5分の無料通話をオプションにして、月額料金を当初のahamoの料金より500円安い月額2,480円に設定したのだが、ソフトバンクもこれに合わせる形でLINEMOの料金を変更、やはり1回5分の無料通話をオプションにすることで、月額500円引き下げる策に出ているのだ。

オプションの料金を足せば横並びではあるのだが、ベースの料金がahamoだけ高くなってしまうため、ahamoだけ料金が高いと懸念する声が消費者から挙がっていたという。ただ一方で、社会に出る20代は音声通話を利用する機会が増えることから、1回5分の無料通話を外すという選択肢はあえて取らず、ベースの料金を引き下げるという選択を取ったようだ。

  • NTTドコモは他社に対抗するべく、ahamoの月額料金をサービス開始前に値下げ。月額2,700円として、税込みでも3,000円を切る価格となった

    NTTドコモは他社に対抗するべく、ahamoの月額料金をサービス開始前に値下げ。月額2,700円として、税込みでも3,000円を切る価格となった

そうしたことからこの説明会では料金の引き下げが大きな注目を集めたが、筆者が気になったのは別の部分である。実は今回の説明会の中心は、まだ明らかにされていなかったahamoの端末に関する施策だったのだが、その中で気になったのは、ahamoを契約する人がドコモオンラインショップで端末を購入する際のフローである。

というのもahamoは新規契約や既存プランからの乗り換え時に、ドコモオンラインショップで同時に端末を購入することで割引を受けることが可能なのだが、新規契約の際はなぜかahamoを直接契約して購入はできないという。まず一度「ギガライト」などのプランを契約し、端末とSIMが届いた後にahamoへのプラン変更をするという、ややこしい手順を踏む必要があるのだ。

  • ahamoに新規契約した際の端末購入フロー。ドコモオンラインショップで端末を購入する際は、なぜか一度「ギガライト」などで契約した後、ahamoに契約変更する必要があるという

もちろん端末の割引を求めなければ「白ロム購入」、つまり回線契約せずに端末だけ購入し、別途契約したahamoのSIMを挿入して利用すること自体は可能だという。ただNTTドコモの料金プランでありながら、ドコモオンラインショップでahamoを選んで新規契約できないというのは、やはり不自然な印象がある。

ahamoの「料金プラン化」を急ぐNTTドコモ

そこに影響しているのはやはり、NTTドコモがahamoを「サブブランド」ではなく「料金プラン」として提供したことではないだろうか。ahamoは2020年12月3日の発表当初から、同社のメインブランドである「NTTドコモ」ブランドの料金プランの1つとして説明されてきたが、その内容を見ると、元々NTTドコモとは異なるサブブランドとして提供しようとしていたのではないか? という痕跡が多く見られ、不自然な印象を与えていたのも事実だ。

  • ahamoの発表会では、料金プランであるにもかかわらず「わかりやすい1プラン」との表記があるなど、サブブランドとして提供しようとしていた痕跡が多く見られた

なぜNTTドコモがahamoを料金プランにする必要があったのかといえば、武田良太総務大臣、ひいては菅政権の影響が非常に大きいといえる。ahamoを発表する直前の2020年11月20日に、武田大臣が他の携帯大手2社がサブブランドで導入した新料金プランを「羊頭狗肉」と強く批判、メインブランドでの料金引き下げでなければ認めないかのような発言をした。その結果、NTTドコモは急遽、「サブブランド」として提供しようとしていたahamoを「料金プラン」として提供せざるを得なくなったと見られているのだ。

だがahamoの発表当初の内容を見ると、ドコモショップでの契約やサポートができないオンライン専用プランだというだけでなく、ファミリー割引のグループ人数にカウントされない、契約年数は引継ぎがなされないなど、明らかに従来の料金は異なる要素が多く存在していた。そうしたことからNTTドコモはahamoの発表後、ahamoをNTTドコモブランドの料金プランにするための変更を相次いで加えている。

具体的にはファミリー割引のグループ人数にカウントできるようにしたり、他のプランから変更した時も契約年数を引き継げるようにしたり、さらには「ケータイ補償サービス」の引継ぎができるようになったことも明らかにされている。先のドコモショップでの不自然な購入フローに関しても、ahamoを他の料金プランと共通化を図るためドコモオンラインショップ側のシステム変更が必要になり、それが間に合わなかったための対応といえるだろう。

  • 「ファミリー割引」のグループ人数にカウントされるようになったり、他プランから移行時に契約年数を引き継げるようになったりと、ahamoはサービス発表後に細かなサービス内容変更を多数実施している

これはポジティブな見方をすれば“改善”といえるのだろうが、筆者には必死に料金プランとしての辻褄合わせをしているようにしか見えない、というのが正直な所である。当初からahamoを従来のNTTドコモブランドと明確に切り離し、独立したブランドとして提供できたのであれば、消費者にこうした不自然さや複雑な印象を与えることもなかったはずだ。

ただ一連の変更を加えてもなお、ahamoではキャリアメールだけでなく留守番電話も使えない、「spモード」が提供されないのでいわゆる“キャリア課金”が利用できないなど、従来のNTTドコモの料金プランとは明確な違いが多く存在する。ドコモショップでの対応も含めサービス開始後に混乱を招く可能性は少なからずある。料金プランとなったahamoを、いかにユーザーを混乱させることなく提供できるかという点は、今後同社にとって非常に頭の痛い問題となりそうだ。