NTTドコモが2019年8月5日、Androidを搭載した一部機種に向けたメッセンジャーアプリ「LINE」の提供を終了することを発表したほか、LINEに対応したフィーチャーフォンなど一部機種で、プッシュ通知が非対応になることを発表した。Androidベースに開発されたフィーチャーフォンの“目玉”とされていたLINEが、縮小傾向にあるのはなぜだろうか。

フィーチャーフォン利用者はLINE利用が不便に

NTTドコモが去る2019年8月5日、一部スマートフォンに向けて提供しているメッセンジャーアプリ「LINE」を、2019年9月頃に終了すると発表した。具体的には2012年発売の「らくらくスマートフォン」(F-12D)と、2014年発売の「スマートフォン for ジュニア2」(SH-03F)の2機種で、いずれもLINEがプリインストールされていた機種。採用するOSが古いことからLINE側のサポートができず、終了に至ったものと考えられる。

そして同時に発表がなされたのが、LINEに対応したスマートフォンや携帯電話に関しての機能制限だ。「らくらくスマートフォン3」(F-06F)や「P-smartケータイ」(P-01J)など8機種で、2020年3月頃よりLINEを起動していない時にメッセージ通知や無料通話着信の通知が受け取れなくなるとのこと。これらも全て「Google Play」などが搭載されておらず、あらかじめLINEがプリインストールされていた機種。今後LINEで通知を受けるには、アプリを立ち上げっ放しにしておかなければいけなくなる。

  • 2016年発売の「P-smartケータイ」(P-01J)など、LINEがプリインストールされていた機種は利用ができなくなったり、プッシュ通知が受けられなくなったりするなどの制約を受ける

一見するとこの発表は、古い携帯電話やスマートフォンでLINEが使えなくなるに過ぎないように見える。だがフィーチャーフォンに関しては、2019年発売の最新モデル「arrows ケータイ」(F-03L)「AQUOS ケータイ」(SH-02L)は共にLINEを搭載しておらず、別途アプリをダウンロードする仕組みもないため、LINEを快適に利用する選択肢が失われてしまうことになる。

  • 2019年発売の「arrows ケータイ」(F-03L)には、既にLINE自体がインストールされていない

らくらくスマートフォンシリーズの最新機種「らくらくスマートフォン me」(F-01L)はGoogle Playを搭載し、アプリをダウンロードできることから、らくらくスマートフォンユーザーは端末を買い替えれば問題は解消するが、フィーチャーフォンでLINEを利用していた人にとって今回の措置は深刻な問題だ。にもかかわらず、なぜNTTドコモはフィーチャーフォンでのLINE利用を縮小する措置を取っているのだろうか。

「+メッセージ」を推す携帯3社、スマホに集中したいLINE

そもそもフィーチャーフォンにLINEが搭載されたのには、部材調達の問題などからフィーチャーフォンのプラットフォームを、「iモード」など従来用いていたものから、Androidベースのものに変更したことが大きく影響している。

フィーチャーフォンユーザーもLINEを利用したいというニーズは以前より存在しており、かつてはiモードなどに向けてもブラウザ版のLINEが提供されていたものの、通知が利用できないなど不便な要素が多かった。そこでプラットフォームがAndroidベースに切り替わったのを機として、LINEもフィーチャーフォン版のアプリを独自提供するに至ったのである。

  • NTTドコモが2015年に発売した「AQUOSケータイ」(SH-06G)。Androidベースのプラットフォームを採用したことを生かし、LINEが利用できることが目玉の1つとされていた

だが時間が経つにつれ、携帯電話会社側とLINE側の関係には変化が出てきている。特に大きな変化となったのは、2018年にNTTドコモとKDDI、ソフトバンクの3社が共同で「+メッセージ」を立ち上げたことだ。

+メッセージは「Rich Communication Services」(RCS)を採用したコミュニケーションサービスで、インターネット技術を用いたLINEとは異なり、技術的にはSMSの延長線上にあるものだ。だがテキストや画像、動画やスタンプを使ってコミュニケーションができる、企業の公式アカウントが提供されるなどサービス内容としてはLINEにかなり近く、“LINE対抗サービス”と評価されることが多い。

+メッセージは後発ということもあってLINEほど知名度は高くないが、それでも携帯電話会社標準のサービスということもあり、2019年8月にはユーザー数が1000万を突破するなど一定の規模を有するに至っている。それゆえ携帯電話会社もフィーチャーフォンの+メッセージ対応を推し進めているようで、特にこのサービスに力を入れているKDDIは、「INFOBAR xv」「GRATINA」(KYF39)などフィーチャーフォンの新しい機種で+メッセージへの対応を進めている。

  • 携帯電話3社は、SMSの延長線上にあるRCSという技術を用いた「+メッセージ」を2018年より提供。+メッセージを搭載したフィーチャーフォンも徐々に増えてきている

一方のLINE側にとっても、LINEはスマートフォン向けのサービスであり、フィーチャーフォン向け対応は悩んだ末での対応であったとされている。しかも現在、フィーチャーフォンの主要ターゲットであったシニア層のスマートフォン利用が進みつつあることから、ニーズが減少傾向にあるフィーチャーフォン向けの対応を進めるのはメリットが薄く、そのリソースをスマートフォン向けのサービスに集中した方がメリットが大きいというのが、正直な所であろう。

そうしたことから今後、フィーチャーフォンでのLINEのサービスは一層縮小するものと考えられる。利用者はスマートフォンに乗り換えるか、今後対応端末が増えると考えられる、+メッセージを利用するかの二択を迫られることになりそうだ。