NTTドコモは2019年4月15日、新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表した。通信料と端末代を分離する「分離プラン」を採用して料金を引き下げ、なおかつ基本料やデータ通信料などをひとまとめにして2つのプランに絞るなど、分かりやすさを重視した内容となっているのだが、発表直後から「分かりにくい」という声が相次いだ。一体なぜだろうか。

複雑な要素をなくした「ギガホ」と「ギガライト」

2018年より、通信料と端末代を分離する「分離プラン」を軸としとした、利用スタイルによって2~4割程度の料金値下げを実現する新料金プランの投入を明らかにしていたNTTドコモ。その新料金プランの内容が、2019年4月15日についに明らかにされた。

  • NTTドコモが2019年4月15日に発表した新料金プラン「ギガホ」と「ギガライト」。いずれも2019年6月1日より提供開始される

その内容を簡単に振り返ると、新しい料金プランの1つは大容量通信を利用する人向けの「ギガホ」(2年定期契約ありで月額6,980円)で、毎月30GBの高速通信が利用できるが、それを使い切った場合も最大1Mbpsと、多くのネットサービスを実用的に利用できる速度が維持されるというのが大きなポイントとなる。

そしてもう1つは「ギガライト」で、こちらは毎月使用したデータ通信量に応じて、1~7GBまでの4段階に料金が変化する段階制のプラン。2年定期契約ありの場合、月当り1GBまでの「ステップ1」で月額2,980円、7GBまでの「ステップ4」で5,980円となることから、主としてライトユーザー向けに位置付けられるものだ。

これらはいずれも、従来バラバラに選ぶ仕組みとなっていた、音声通話をするための「基本プラン」と、インターネットを利用するための「サービスプロバイダー料金」(NTTドコモの場合は「spモード」)、そしてデータ通信をしやすくするための「パケット定額サービス」の3つをセットにしている。通話定額、あるいは5分間の通話定額が必要な場合は別途オプションを追加する必要があるものの、基本的にはギガホとギガライトのどちらかを選べばよく、以前よりもシンプルに選びやすくなったことは確かだろう。

  • 「ギガホ」はヘビーユーザー向け、「ギガライト」はライトユーザー向けのプランとなるが、どちらも基本料やデータ通信料をセットにし、分かりやすい仕組みとなっている

だがそれにもかかわらず、新料金プランが発表された後、SNSなどでは「安くならないのでは」「分かりにくい」という声が多く見られた。NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏も、2019年4月26日に実施した決算説明会で「PRをもっとやらないといけない」と話すなど、消費者への説明対応に追われている様子がうかがえる。

分かりにくさは変化の大きさと端末代の不透明感にあり

なぜ、新料金プランが分かりにくく見えてしまったのだろうか。先の決算における吉澤氏の説明によると、理由の1つは新料金プランの仕組みを大きく変えたことにあるようだ。消費者は基本プランとspモード、パケット定額サービスを組み合わせて選ぶことに馴染んでいるため、ギガホやギガライトがパケット定額サービスの1つに見え、「別途基本料が必要なのではないか」と勘違いしている人が多くいたようだ。

2つ目は、新料金プランに係る新しい割引サービス「みんなドコモ割」と「ドコモ光セット割」の存在だ。これらの割引は、3親等以内の契約者同士であれば組むことができる「ファミリー割引」のグループに入っている人に対して適用されるもので、全て適用されれば最大で月額2,000円の値引きが受けられるのだが、この仕組みを伝わりにくいものにしているのが「シェア」の存在である。

というのも、NTTドコモが現在提供している料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」では、基本的に家族の代表者1人が「シェアパック」と呼ばれる家族全員分のデータ通信容量を契約し、それを家族でシェアする仕組みを採っている。だがデータ通信量をシェアできるグループは、必ずしもファミリー割引グループの契約回線全員という訳ではない。

  • 新料金プラン向けの「みんなドコモ割」「ドコモ光セット割」は、「ファミリー割引」のグループ内回線全員に適用され、従来のシェアパックとは仕組みが大きく異なる

それゆえ現在はファミリー割引グループの存在自体がやや希薄になっており、それが「パケットをシェアしている人達同士でしか割引が適用されない」という誤解を生んでしまったといえる。こうした点は吉澤氏も認めており、改めてファミリー割引グループ自体の認知を高める活動をしていきたいとしている。

だがもう1つ、筆者が新料金プランを分かりにくく感じさせている要因と見ているのが、端末料金に関する施策がまだ明らかにされていないことだ。新料金が採用している分離プランでは、従来の「月々サポート」「端末購入サポート」のように、毎月の通信料を原資として端末価格を値引くことができなくなり、基本的にはスマートフォンを値引きなしで購入する必要がある。高額なスマートフォンを購入する人は、かえって割高になる可能性があるのだ。

しかしそれでは、最近増えつつある10万円を超えるようなハイエンドモデルの販売が難しくなることから、従来とは異なる形で何らかの値引き施策も求められている。NTTドコモも新しい形での端末購入補助を提供する考えは示しているのだが、新料金プラン発表時点ではその内容が明らかにされなかった。

それゆえ現時点では非常に中途半端な状態にあり、通信料と端末代を合計した場合、従来のプランと比べて毎月の料金が本当に安くなるのかどうかが判断できないのである。新たな端末購入補助の仕組みは夏商戦の新端末発表時点で公表されると見られているが、同時に発表した方が消費者には内容がが伝わりやすかったのではないかと、筆者は考えている。

  • NTTドコモが提示する事例では多くの人が2~4割安くなるとされているが、端末料金に対する施策が公表されておらず、価格を含めた場合の比較は現時点ではできない状況だ