2019年に入った直後から、アップルが売上予測の下方修正することを発表したことが、世界経済に大きな打撃を与えている。その要因として主に中国でiPhoneの売上が減少したことが挙げられているが、なぜiPhoneの売上が落ちることが、ここまで世界経済に影響を与えることになるのだろうか。
年明け早々iPhoneの販売不振が注目
2019年の年明け早々となる1月2日、米アップルが売上予測を下方修正すると発表したことが、世界経済に非常に大きな影響を与えている。実際、米株式市場が大幅な株安となっただけでなく、日本でも、1月4日の東京証券取引所における日経平均株価が一時700円を超す下げ幅を記録。いち企業の業績が、世界的かつ多方面に影響を与えていることが分かるだろう。
各種報道によると、アップルの業績が悪化した要因はiPhoneの販売が振るわなかったためであり、特に中国や香港、台湾などを含む大中華圏で、iPhoneの販売不振が大きく影響したとされている。中国での販売が不振となった大きな要因の1つは、ファーウェイなどの地場メーカーにシェアを奪われていることがある。
だがもう1つ、やはり米中摩擦の影響も少なからずあると考えられよう。現在米国を中心として、ファーウェイなど中国企業の通信機器を政府調達から排除しようという動きが広まっているが、これに反発する形で、米国製品の象徴であるiPhoneが中国で買い控えられた可能性も考えられる。
だがiPhoneの販売不振は、中国だけとは限らない様子だ。実際国内でも、iPhone新機種の販売が好調とは言えない様子を示す出来事が起きていた。それは「iPhone XR」において、発売されて間もない2018年11月中旬頃に、NTTドコモが早くも値下げを実施したことだ。
新iPhoneの中でも、数が出そうな低価格モデルとなるiPhone XRの販売が特に不振だといわれている。そして、国内でアップル製品が販売から早々に値引き販売されるケースは稀だ。それだけにこの値下げが、iPhoneの不振を象徴する動きとして関心を集めているのだ。
例年の傾向から考えると、2017年に新機軸のiPhoneである「iPhone X」が登場していることから、2018年はそのブラッシュアップを進める一方で、インパクトのある機種が登場しにくい端境期であった。それだけに2017年よりも販売の伸びが弱まる可能性は十分考えられたのだが、実際の販売状況はそれ以上に深刻だったということなのだろう。
米中経済だけでなく部品メーカーへの影響も懸念
しかしなぜ、iPhoneの販売不振でアップルが売上を落とすことが、世界経済にまで大きな影響を及ぼすことになるのだろうか。最も大きな要因はやはり、ここ最近顕著になりつつあった米中の摩擦による景気の悪化を象徴する出来事であったからだろう。
iPhoneは米国企業の製品だが、製造は主に中国の工場が担っているし、販売も中国向けが約2割を占めると言われている。そうした共依存関係にある両国の関係が悪化すれば、iPhoneだけにとどまらず、あらゆる製品の販売や生産など、さまざまな面で悪影響が起き、景気減衰を招く可能性があるわけだ。
だがもう1つ、特に日本の経済を考える上で無視できないのが、iPhoneの販売不振がアップルだけでなく、iPhoneのサプライチェーンを構成する多くの企業にも悪影響を与えることである。
アップルは製品の設計は自社でしているものの、それを作るための部品や、工場などを持っている訳ではない。そのため部品の調達や製造、物流など多くの部分を外部の企業に委託している。しかもアップルは世界トップクラスの販売数を誇る企業であるし、ライバル他社と比べモデル数が少ないことから、部品1つ当たりの調達量、そして生産数も非常に多い。
それゆえiPhoneに関わる企業にとって、アップルとの取引は売上の多くを占めることにもつながっており、iPhoneの販売拡大とともに業績を伸ばしてきた企業も少なくない。それは一方で、iPhoneの販売が落ち込めば自社の売上が大きく落ち込むことも意味している。実際に今回のiPhone販売の売上下方修正を受ける形で、アップルに部品を提供したり、iPhoneを製造したりする企業の株価も軒並み急落している。
とりわけ影響を受けやすいのが、iPhoneを生産する中国に近く、アップルとの取引が多い東アジアのハイテク関連企業である。日本国内にもiPhone向けの電子部品をアップルに供給している企業が非常に多いことから、iPhoneの販売減少が日本経済全体にダメージを与える可能性が懸念されているのだ。