ソフトバンク・KDDI(au)・ドコモは2016年頃より、データ通信量が20GBを超える大容量プランの提供に力を入れるようになった。この流れは年々進んでいき、今年新たに発表されたプランを見ても、通信量をさらに追加したものや、動画・SNSの通信量をカウントしないものなど、大容量化を進めるものがほとんどであった。そこには通信技術の向上だけでなく、各社の思惑も。
20GB以上のプランにさまざまなオプションを付随
ここ最近、毎年のように大きな変化が起きている大手携帯キャリアの料金プランだが、2018年も大きな動きが相次いだ。その1つはKDDIの「auフラットプラン25 Netflixパック」だ。
これは20GBの通信量が利用できる「auフラットプラン」に、映像配信サービスの「Netflix」と「ビデオパス」をセットにし、さらに5GBの通信容量を追加したもの。別途契約を必要とせずにNetflixが利用できる上に、別々に契約するよりもお得な料金で利用できるのが特徴だ。
もう1つは、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」。これは通信容量が50GBの「ウルトラギガモンスター」に、YouTubeやHulu、AbemaTVなど、計8つのサービスを利用した時の通信量をカウントしない「カウントフリー」の仕組みを付け加えたものだ。
いずれのプランにも共通するのは、通信容量が非常に大きいこと。数年前には5~7GB前後の通信容量が主流だったことを考えると、その数倍もの容量を誇る最近のプランはいわば「使い放題」にも近い。
通信量の20GB超えは、今となっては驚く話ではなくなった。だが、2016年頃までの大容量プランといえば、通信料金だけで月額1万円を超える非常に高額なもので、「契約したくでもできない」ものであった。それが手ごろな料金となり、多くの人に利用されるようになったきっかけは、2016年にソフトバンクが「ギガモンスター」を投入したことである。
ギガモンスターは、20GBのデータ通信を月額6,000円で提供した。基本料金を加えても月額1万円を切る安さで注目を集めた。その後KDDIやドコモも同様のプランを提供するようになり、以後大手キャリアの利用者には20GB以上の大容量プランが広く浸透するようになった。
本音は通信料収入の維持拡大
使える通信容量が大きければ、大容量通信が必要なサービスを安心して利用できる。通信量を気にしてWi-Fi環境下でしか利用しなかった動画サービスを、今ではLTE環境下でも抵抗なく利用するようになったユーザーも多いことだろう。大容量プランの登場が、スマートフォンで利用するネットサービスの幅を広げたのは確かだ。
しかし、なぜキャリアは大容量プランの低価格化を推し進めたのか。その理由の1つが、技術の進化によって、低コストでの大容量通信の実現が可能になった点にある。
キャリア各社は、複数の電波を束ねることで高速かつ大容量の通信を可能とする「キャリアアグリゲーション」や、小型の基地局「スモールセル」の設置による負荷分散などといった4Gの技術に加えて、多数のアンテナを用いて個々の端末に直接電波を飛ばすことで、大容量通信を実現する「マッシブMIMO」など、次世代移動通信システムの5Gに用いられる技術の一部も先取って活用することで、大容量プランの提供を実現している。
だが、大手キャリアの一番の目的は、下落傾向にある通信料収入を回復させることである。MVNOによる低価格なモバイル通信サービスの台頭によって、最近の大手キャリアは、低価格なサブブランドに力を入れたり、MVNO自体を買収したりするなど、低価格サービスの充実に力を入れるようになった。
その結果、顧客の流出を抑えることはできたものの、これまで高額な料金プランを契約していた人達が、キャリア自身が用意した低価格サービスへと流れる動きを強める結果にもなってしまった。そのことがキャリアの通信料収入を引き下げる要因へとつながっている。
キャリアにとって通信料金は収入の柱であるだけに、低価格化の進行は業績悪化に直結してしまう。そこで、高価格なサービスの魅力を高めることによって低価格サービスへの流出を防ぎ、ARPU(average revenue per user:顧客一人あたりの平均売上高)を下げ止めるために、通信量を大幅に増やした。これが、大容量プランが生まれた理由と見られる。
ここで気になるのは、大手キャリアが大容量プランだけでなく、利用した通信量に応じて毎月の料金が変化する、“段階制の料金プラン”も積極的にアピールしはじめたことだ。これはどちらかというとスマートフォン初心者に向けたものという位置付けと捉えられる。行政による低価格化の圧力によって生まれた側面も多分にあるだろう。それだけにキャリアとしては、段階制よりも魅力が大きく値段が高い、大容量のプランを多くの人に契約して欲しいというのが本音でもあるのだ。