NTTドコモは2024年4月10日にアマゾンジャパンとの協業を発表、「Amazon.co.jp」の買い物でdポイントが貯まり、使える施策などを新たに展開するとしている。だが一連の施策によるポイント還元率は最大3.5%で、楽天グループの「楽天市場」などと比べ還元率を高めるのが難しい様子を示している。一体なぜだろうか。
回線契約不要でもアマゾンでの買い物でポイント獲得可能
2024年に入って以降、新たなサービスや戦略などを次々発表し、攻めの姿勢を見せているNTTドコモ。そのNTTドコモが2024年4月10日に発表会を実施し、新たに発表したのが米アマゾン・ドット・コムの日本法人で、「Amazon.co.jp」を運営しているアマゾンジャパンとの協業だ。
この協業で打ち出された施策は大きく2つある。1つはNTTドコモ回線契約に関係なく、dポイントの会員基盤「dポイントクラブ」のアカウント「dアカウント」と、Amazon.co.jpのアカウント「Amazonアカウント」を連携することで、dポイントを貯めたり使ったりできるというものだ。
Amazon.co.jpで他社のいくつかのポイントが使える仕組みは既に存在するが、他社のポイントを貯められるのはdポイントが初となる。Amazon.co.jpのポイントプログラム「Amazonポイント」との二重取りも可能だが、dポイントが貯まるのは1回の注文で5000円以上注文した時のみで、貯まるポイントの上限も100ポイントまでとなる。
もう1つはNTTドコモ回線の契約者に向けたもの。NTTドコモ経由でAmazon.co.jpの有料プログラム「Amazonプライム」の「月間プラン」を契約することで、毎月120ポイントのdポイント還元が受けられるようになる。また、初めてAmazonプライムを契約する人は、3カ月間600円の還元が受けられる(注:この3カ月間は毎月120ポイント還元の適用外)という。
そしてNTTドコモ経由でAmazonプライムを契約した人の中で、「eximo」「ahamo」といった中・大容量プランを契約しているか、60歳以上であるという条件を満たしている場合、Amazon.co.jpでNTTドコモのスマートフォン決済「d払い」を使って決済すると、d払いで付与されるdポイント還元率がアップ。通常の0.5%に加え1%のポイント還元が受けられるようになる。
なお一連の施策の条件を全て満たせば、Amazon.co.jpでの買い物で最大3.5%のdポイントが受けられるという。もっとも全ての条件を満たすには60歳以上でないといけないので高いのだが、アカウント連携によるポイント付与は契約回線や使用する決済サービスの種類によらず適用されるだけに、非常に幅広いユーザーが恩恵を受けられる施策であることは間違いない。
他社サービスとの協業ゆえの難しさ
ただ同じEコマースサービスである楽天グループの「楽天市場」などを見ると、系列の複数のサービスを契約することでポイント還元率が大幅にアップする仕組みに力を入れ、それを呼び水として顧客獲得を推し進めている様子を見て取ることができる。実際、楽天市場の「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)では、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」を契約するだけで、楽天市場で買い物した時のポイント還元率が4%アップし、5%の還元が受けられるようになる。
一方で今回の施策を見るに、NTTドコモ回線を契約し、なおかつd払いで決済してもポイント還元は最大で3.5%、うち1%分は5000円を超えた注文をしないと手に入らないなど、ポイント還元率では他社のEコマースと比べ低い印象を受けてしまう。ポイント還元率が低ければ顧客にお得感が薄い印象を与えてしまうように思えるのだが、付与率を大きく上げられないのはなぜなのだろうか。
最も大きな要因は、やはり2社による協業で実現している施策だからであろう。楽天市場や、ソフトバンク傘下のLINEヤフーが展開している「Yahoo!ショッピング」のように、自社系列のサービスであれば、ポイントの付与に必要な原資は自社やグループ企業が負担するので付与率をコントロールしやすい。
だが他社との協業となると、そうはいかなくなる。実際NTTドコモは、アカウント連携によってAmazon.co.jpで付与されるdポイントの原資は、通常のdポイント加盟店と同じ仕組みでアマゾンジャパン側の負担になると説明している。それゆえ5000円以上注文しないとポイントが入らない仕組みとなったのはアマゾンジャパン側の判断によるところが大きく、NTTドコモ側がもっとポイントを付与したいと思っても難しかった訳だ。
そうしたことからNTTドコモ側も今回の施策については、楽天市場などのようにポイント付与率の高さによるお得感を強く打ち出すのではなく、少ないポイント付与額をNTTドコモの回線契約者以外にも提供する、還元のすそ野の広さを打ち出し差異化を図ろうとしている様子がうかがえる。
このことは、Eコマースに強みを持たないNTTドコモが、強力なEコマースサービスを持つ競合の携帯各社に対抗するのに苦慮している様子を如実に示したといえる。ただ一方で今回の施策が、非常に多いAmazon.co.jpの利用者に恩恵をもたらすことも確かなだけに、うまくアピールしていけば顧客拡大につながる可能性は十分あるだろう。