中国シャオミの日本法人であるシャオミ・ジャパンは2023年12月5日から期間限定で、シャオミの製品を体験できるポップアップスペース 「Xiaomi Smart Holidays from “mi” to you!」を東京・渋谷で展開している。シャオミは海外で、自社製品を扱うショップを積極展開しているが、この動きは日本でのショップ展開につながるものなのだろうか。
シャオミ製品を体験できるスペースを展開
日本ではスマートフォンメーカーとして知られるシャオミ。だが同社はスマートフォン以外にも非常に幅広い製品を扱っており、低価格のスマートバンド「Xiaomi Smart Band」シリーズが高い人気を誇るほか、最近ではチューナーレステレビをKDDIが独占販売し「auショップ」で販売されたことが話題となった。
だが海外では他にもより多くの製品を扱っており、中にはスマートデバイスや電化製品以外のものもある。そこでシャオミは製品の多様性を生かして自社独自のショップ「小米之家」を、中国のほか海外のいくつかの国や地域で展開。スマートフォンを中心にしながらも、さまざまな自社製品を販売している。
ただ日本でシャオミはかなり後発のメーカーということもあり、日本でのショップ展開はまだオンラインのみにとどまっている。しかしながらそのシャオミがここ最近、実店舗展開を推し進めようとしているのでは? という動きを見せている。
それは、シャオミの日本法人であるシャオミ・ジャパンが2023年12月5日から東京・渋谷で実施している「Xiaomi Smart Holidays from “mi” to you!」というもの。これは12月17日までの期間限定で展開しているもので、クリスマスシーズンに向けシャオミの製品をアピールするべく、製品に実際に触れるなどして体験できるポップアップスペースとなる。
施設内ではシャオミのスマートフォンをはじめとしたさまざまな製品が展示されており、実際に触れて体験できるのはもちろんだが、それに加えて発売されたばかりの「Xiaomi 13T」シリーズで実際に写真を撮影するスペースなども設けられている。
また中国で販売している四足歩行ロボットの「CyberDog2」や、海外では高い人気を誇るキックボードなど、シャオミが海外で提供している先進的な製品も展示。自社の製品だけでなくブランドや取り組みもアピールする狙いも強いようだ。
ショップ拡大が販売拡大につながらない日本のスマホ市場
シャオミはこれまで、携帯各社の販路開拓やオンラインでの販売などに重点を置く一方で、ファン向けのミーティングに力を入れるなどプロモーションはどちらかといえば“狭く深く”に重点を置いてきた印象がある。だが期間限定とはいえ大都市部にポップアップスペースを設け、周辺を訪れる不特定多数の消費者に向けたアピールを実施する今回の施策は、同社のプロモーション戦略上非常に大きな変化といえるだろう。
そしてあくまでプロモーションに重点を置いた施策とはいえ、あえて実店舗でのイベントを実施したことは、日本での本格的なショップ展開に向けた試験的取り組みと見ることもできる。それだけに今回の動きを機として、日本におけるシャオミのショップ展開に向けた動きが急加速する可能性も比較的高いと筆者も見る。
とはいうもののシャオミが日本でショップ展開する上ではハードルもいくつかあり、最大のハードルとなりそうなのはスマートフォン市場の違いだ。中国をはじめ多くの国では日本でいう所の「SIMフリー」、いわゆるオープン市場のスマートフォン販売が主流だが、日本では携帯電話会社からの販路が主流。シャオミも2023年に入ってからは、販売数が見込めるKDDIやソフトバンクからの販売を重視する傾向にある。
それゆえ販売促進のために実店舗を設けてスマートフォンを販売したとしても、たくさん売ることには結びつかず、むしろ固定費がかかるなどして店舗の維持が難しくなる可能性も考えられる。現在の所日本でショップを構えてビジネスが成り立つのは圧倒的シェアとブランドを持つアップルくらいなもので、それ以外のメーカーが自社ショップを展開して販売につなげるのはなかなか難しい。
実際サムスン電子は、東京・原宿に自社施設「Galaxy Harajuku」を2019年より展開しているが、端末購入も可能ではあるもののどちらかといえば製品の体験やプロモーション、サポートに重点が置かれている。その後の店舗拡大に積極的に動く様子はなく、同社はプロモーションコストと割り切って店舗展開している様子がうかがえる。
そうしたことからシャオミが日本でショップを展開する上では、海外のようにスマートフォンを売ることを目的とするのか、プロモーションなど販売以外の部分に重点を置いた展開をするのか、どのような戦略を取るのかが非常に気になる所でもある。店舗を構えても短期間で閉店したとなればかえってイメージを悪化させてしまうだけに、慎重さが求められることは確かだろう。