日本でなかなか普及が進まない折り畳みスマートフォンだが、モトローラ・モビリティが新機種を投入したり、サムスン電子が既存モデルのオープン市場向けモデルを投入したりするなど、ここ最近メーカー側が販売拡大に力を注ぐ動きが広がっている。ただ円安の影響などもあって値段の高さという最大の課題は解消が進んでおらず、普及に向けた道のりは平たんではない。

モトローラは新機種、サムスン電子は販路拡大

日本では投入される機種数が少なく、普及が進んでいない折り畳みスマートフォン。だがここ最近、その折り畳みスマートフォンを巡って大きな動きがいくつか起きている。

その1つが2023年11月20日、モトローラ・モビリティが折り畳みスマートフォンの新製品「motorola razr 40」の日本投入を発表したこと。これは既に販売されている「motorola razr 40 ultra」の下位モデルに当たる縦折り型の端末で、チップセットの性能や背面ディスプレイのサイズなどはmotorola razr 40 ultraより引き下げられているが、海外では10万円を切る低価格で販売されるなど折り畳みスマートフォンとしては非常に安いことが特徴となっている。

  • モトローラが新機種投入、広がりつつある折り畳みスマホの普及に向けた最大の課題は

    モトローラが2023年11月20日に国内投入を発表した「motorola razr 40」。motorola razr 40 ultraより性能は引き下げられているが、その分価格は安く設定されている

加えてmotorola razr 40は、FeliCaが搭載され「おサイフケータイ」などが利用可能だ。ハード性能は同じでアプリなどに違いがある兄弟モデル「motorola razr 40s」がソフトバンクから販売されることから、FeliCaの搭載はソフトバンクからの要望が大きく影響したと考えられる。

  • ソフトバンクからは兄弟モデルの「motorola razr 40s」が販売。ハード的にはmotorola razr 40と差はなく、もちろんFeliCaも搭載している

そしてもう1つ、大きな動きを見せたのがサムスン電子である。同社は2023年11月28日に折り畳みスマートフォン「Galaxy Z Flip5」「Galaxy Z Fold5」のSIMフリー(オープン市場向け)モデルを2023年12月7日に発売することを明らかにしている。

これらは既にNTTドコモやKDDIの「au」ブランドから販売されているもの。ただオープン市場に向けてはGalaxy Z Flip5が512GBモデル、Galaxy Z Fold5が1TBモデルといずれも最上位モデルが投入されるようで、カラーも日本では投入されていないグレーを採用するなど、携帯各社向けのモデルとは一定の差異化が図られているようだ。

  • サムスン電子は2023年12月7日に「Galaxy Z Flip5」「Galaxy Z Fold5」のSIMフリーモデルを販売すると発表。いずれも最上位モデルを投入し、カラーはグレーと携帯各社向けモデルとの差異化が図られている

サムスン電子はここ最近、オープン市場開拓への注力を急速に進めていることから、今回の取り組みもその一環であることは間違いない。ただ折り畳みスマートフォンに最も力を入れている同社の販路拡大は、その普及拡大にも少なからず影響してくる動きといえよう。

「motorola razr 40」はなぜ日本でこれほど高いのか

日本で折り畳みスマートフォンの市場開拓に力を入れる2社が、折り畳みスマートフォンの新機種を投入したり、販路を拡大したり動きを見せていることが、折り畳みスマートフォンの普及拡大にプラスにつながることは間違いない。ただその一方で気になるのはやはり価格だ。

折り畳みスマートフォンが普及拡大する上で最大の障壁となっているのは値段が高いこと。これまでの傾向を見ても横折り型のスマートフォンで20万以上、縦折り型のスマートフォンでも15万円以上するというのが常識となっているだけに、依然多くの消費者にとって容易に手が出せない端末であることは確かだ。

それだけに普及に向け求められるのは低価格化なのだが、昨今の円安なども影響して折り畳みスマートフォンは高止まりが続いている。今回各社が発表した機種を確認してみても、SIMフリー版のGalaxy Z Flip5は17万9,900円、Galaxy Z Fold5は29万8,200円と、いずれも最上位モデルということもあって値段はかなり高い。

そして低価格での販売が期待されたmotorola razr 40も、モトローラ・モビリティのオンラインショップで12万5,800円、ソフトバンクにおけるmotorola razr 40sの機種代金定価は12万1,680円といずれも12万円を超える値段設定となってしまった。同機種の海外での価格と比べても、かなり高いと言わざるを得ないのが正直な所である。

  • motorola razr 40の価格は12万5,800円と、海外と比べかなり高く設定されており、上位モデルのmotorola razr 40 ultraとの価格差も3万円程度にとどまっている

モトローラ・モビリティ側の説明によると、ここまで値段が上がってしまった理由としてはFeliCaを搭載したことだけでなく、ソフトバンクから販売する上で品質に関する試験にかなりコストを費やしたことを挙げている。日本の携帯電話会社は世界的にも端末の品質に対する要求水準が非常に高いことで知られているが、それに加えてmotorola razr 40は強度に不安を抱く声が多い折り畳み端末ということもあって、試験を通過し販売にこぎつけるのにかなりのコストがかかったようだ。

もちろんソフトバンクや、MVNOでmotorola razr 40を独占販売するインターネットイニシアティブの「IIJmio」などが端末を値引きするキャンペーン施策を展開しており、それらを利用すれば10万円を切る価格で購入すること自体は可能だ。ただそのためにはキャンペーン期間に購入したり、番号ポータビリティで指定のプランに乗り換えることなどが必要で、誰でも安く購入できる訳ではない。

折り畳みスマートフォンが値引きなしで10万円を切ったとなれば、消費者に与える影響は大きく普及も進むと考えられるだけに、それが実現しなかったのは非常に残念だ。とはいえ性能をある程度引き下げ、普及価格帯を目指すモデルが日本市場に投入されたことに大きな意味があることも確かで、2024年には10万円を切る折り畳みスマートフォンが登場し、市場に大きなインパクトをもたらすことを期待したい。