ここ最近、アップルが「iPhone SE」の次世代モデルの開発を中止したという憶測報道が増えている。あくまで噂に過ぎないが、もし今後iPhone SEの新機種が登場しないとなった場合、日本市場にどのような影響が起きると考えられるだろうか。
iPhoneの低価格領域を支えるiPhone SE
ボディデザインは旧型で画面サイズも小さいが、片手で操作しやすいコンパクトさと、最新チップセットを搭載し高い性能を備え、他のiPhoneより低価格でコストパフォーマンスが高いことから人気の「iPhone SE」シリーズ。だがここ最近、そのiPhone SEの今後に関して不穏な憶測報道がいくつか見られるようになった。
それは、アップルがiPhone SEの次世代モデルの開発を中止したのではないか? というものだ。一連の報道を見ると、2024年にiPhone SEの新モデルが登場すると予想されていたのだが、その計画が中止された可能性があるというものが多いようだ。
無論、これらの報道は周辺の関係者などからのリーク情報などを基にした憶測報道に過ぎない。実際に新しいiPhone SEが出るのかどうか、そもそも新しいiPhone SEを開発しているのかどうかはアップルのみが知る所であり、その真偽を知る術はない。
実際、iPhone SEはこれまでも継続的に投入されてきたモデルという訳ではない。初代iPhone SEが発売されたのは2016年だが、その後第2世代のiPhone SEが発売されたのは2020年と4年もの間が空いているし、第3世代のiPhone SEが発売されたのは2022年と、間隔が短くなってはいるが毎年継続的に投入されている訳ではないことが分かるだろう。
それゆえアップルの戦略上、しばらくiPhone SEを投入しない可能性は十分あり得ることなのだが、iPhone SEはiPhoneの低価格ラインアップを支える重要な存在にもなっている。それだけに新機種が発売されないとなればアップルも何らかの戦略変更をしてくる可能性があるだろうし、それによって市場に大きな動きが起きることも十分考えられる。
ここでは日本市場に限定した影響を考えてみたいのだが、もし今後iPhone SEの新機種が登場しないとなれば、iPhoneの低価格帯のラインアップが弱くなることから販売面では少なからず影響が出てくるものと考えられる。
Apple Storeでの価格を見ると、現在の最新モデルである「iPhone 14」シリーズはいずれも10万円を超えているし、現行のラインアップでは最も古い「iPhone 12」でさえ、64GBモデルは9万2,800円とかなりの高額だ。円安で値上げがなされたとはいえ、64GBモデルで6万2,800円で購入できる第3世代のiPhone SEが、購入しやすさの面では群を抜いていることが分かる。
それゆえもしiPhone SEのラインアップが姿を消したとなれば、今後iPhoneの新機種は旧機種でも10万円近い価格を記録することとなる。もちろん今後の為替の動向によって全体的に価格が安くなる可能性もあるだろうが、劇的に値段が下がる訳ではなく新品のiPhoneを購入しづらくなることは確かだろう。
中古iPhone販売活性化でアップル戦略転換の可能性も
それに輪をかけてiPhoneを購入しづらくする可能性を高めるのが政府による値引き規制だ。というのも一度は法律で規制された携帯電話会社によるスマートフォンの大幅値引きが、ここ最近法に触れない形で復活しており、とりわけiPhone SEシリーズのように比較的低価格で人気があるモデルは大幅値引きの対象となりやすく市場でも非常に購入しやすい状況にある。
だがこの値引き手法は転売ヤーによる買い占めを招きやすいなどの問題を招いていることから、現在総務省で規制に向けた議論が進められている最中だ。その議論は2023年夏頃に取りまとめがなされることから、少なくとも2023年後半には1円スマホの販売手法が規制され、スマートフォンの大幅値引きが再び姿を消す可能性が高い。
低価格のラインアップが姿を消し、さらに端末値引きが従来以上に規制されるとなれば、携帯各社の値引きによって安くiPhoneを買うことは今後一層難しくなるだろう。もしそうなった場合、起きてくるのが中古市場の存在感が高まることだ。
従来日本では携帯電話会社の大幅値引きでスマートフォンを安く買うことができたことから、中古のスマートフォン販売があまり活性化していなかった。だが日本はiPhoneのシェアが非常に高く、端末が高くなったからといってiOSのエコシステムから逃れられない人も多数存在することから、より安価なiPhoneを求めて低価格のAndroidスマートフォンより、中古のiPhoneを選んで購入する人が増えると予想されるのだ。
そして中古市場の拡大は、アップルの販売戦略にも影響を与える可能性がある。それは「認定整備済製品」のiPhoneを日本で販売することだ。
アップルは以前から、初期不良などで返却された製品を自ら整備し、動作確認した製品を認定整備済製品として販売している。日本でもこれまでMacやiPadなどの認定整備済製品は販売されてきたのだが、iPhoneだけは扱っていなかった。そこには、日本では携帯各社の値引きで新品の販売を重視するアップルの戦略があったと考えられるが、新品が売れなくなったとなればそうも言ってはいられなくなるだろう。
もちろん何度も触れているように、iPhone SEの新機種に関する報道はいずれも憶測にすぎず、その真偽は分からない。だが日本ではかつて端末の大幅値引きが状態化していた影響から、スマートフォンに低価格を求める傾向が非常に強い。それゆえ人気の高いiPhoneで最も低価格なiPhone SEの新機種が今後姿を消すとなれば、市場にかなりの影響が出る可能性が高いことは確かだろう。