私もそうでしたが、テクニカル分析はファンダメンタルズ分析よりとっつきが良く、またわかりやすいことから一般に普及しています。しかし、相場を総合的に分析する上では、やはりファンダメンタルズ分析からのアプローチも大変重要です。
ファンダメンタルズ分析も重要
為替における一般的なファンダメンタルズ分析とは、発表される対象国の経済指標からその国の景気動向や雇用情勢、物価の状況、あるいはもっと広義では金融政策や政治状況を分析することで、対象国通貨が今後どのように推移するかを予測することです。こう聞けば確かに、ファンダメンタルズ分析に面倒で難解な印象受けることと思います。
しかし、こうしたファンダメンタルズ分析のアプローチの仕方はエコノミストとしての分析法であって、トレーディングによって利益を追求するトレーダーとしての分析法とは違います。
トレーダーにとってのファンダメンタルズ分析は、各種経済指標や金融政策の発表などに向けて、事前にマーケットがどのような結果を求めていて、そのためにその時点でどのようなポジションをマーケットの大勢が持っているかということを推測することに力点が置かれます。
発表された経済指標や金融政策の内容を深く分析することよりも、例えば米雇用統計の非農業部門就業者数の予想値と実際値の違いはどれぐらいあって、それはマーケットの大勢の期待に応えるものだったのかあるいはマーケットを失望させるものだったのかを判断し、売るか買うか様子見するかを決定します。
また、その国の中央銀行の金融政策決定会合において、金融政策を変更したか据え置いたかという決定を確認することで、マーケットがどのような反応をするかを予測し、売るか買うか様子見するかを決定します。
つまり、経済指標等の発表によってマーケットの大勢がどのような行動に出るかを事前に予測し、利益につなげることがトレーダーにとってのファンダメンタルズ分析です。
知的推理ゲームと思えばなかなかおもしろいものですし、またテクニカル分析によって予測される相場見通しをファンダメンタルズ分析によって補強することが可能です。
ファンダメンタルズ分析への取り掛かりは、まずは新聞やネットで今なにがマーケットで話題になっているのかを知ることから始めることをお勧めします。
そして次の段階で経済指標の予想に対して結果がどうで、それに対してマーケットがどのように反応したかをチェックする習慣をつけ、更に自分なりにマーケットの反応を予測し実際にトレーディングしてみることです。
相手の手の内を暴く
率直なところ、トレーダーにとってのファンダメンタルズ分析とは「相手の手の内を暴く(あばく)」ということだと言えます。相手をマーケットの大勢と読み替えて簡単に申し上げれば、今の相場はマーケットの大勢のポジション(手の内)を探り出そう(暴く)とすることが顕著な相場だということです。
マーケットの大勢のポジションを推理することが大事だと申し上げていますが、今のような相場の方向性がはっきりしない時期はなおさらのこと、マーケットの大勢のポジションを読むことがマーケットで生き残っていくためには大変重要です。
こうした相場で重要なポイントは、「自分が考えることは、他の多くのマーケット参加者も同じように考えている」と自覚することです。特にポジションが大きく一方に偏るため、テクニカルパターンが示す方向とは逆方向に相場が動きやすくなります。また重要指標発表や要人発言に対しても、マーケットの大勢が一斉に同方向のポジションを持とうとするため、本来動くべき方向とは逆方向に相場が動きがちです。
それだけに重要なことは相手の手の内を読むことであり、そのためには推理することに十分慣れることだと思います。
※画像は本文とは関係ありません。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。