為替取引は、元々は、「外国為替及び外国貿易管理法」のもと銀行間でのみ行われていました。

そのため、1985年のプラザ合意で貿易不均衡是正のための円高誘導により、ドル/円が10年間で160円ものドル安円高の大相場になっても、個人投資家は、一切為替取引ができず、みすみす大きな収益チャンスを逃しました。

当時は、銀行ディーラーの独壇場で、彼らの中には高額所得者が続出しました。

その後、1998年の外為法改正により、一般企業や個人にも外国為替取引が解放されました。この改正によって、外国為替証拠金取引(FX取引)が日本でも一般に取り扱われるようになりました。

そして、それから、19年がたちましたが、その間に外国為替取引を取りまく環境は一変しました。

銀行ディーラーと個人投資家(画像はイメージ)

外国為替取引はどう変化した?

まず、以前の外国為替の主流であった銀行が外国為替取引から大幅後退しています。

本を正せば、2008年のリーマンショックによりますが、これにより銀行は大打撃を受けました。特に、欧州系銀行のダメージは大きく、今でも経営不安説が出る始末です。また、銀行の儲け過ぎ批判も厳しく、一時は、イギリスでは、ディーラーに支払うボーナスの多寡まで、国会で取り上げられたほどでした。

さらに、コンプライアンス(法令順守)や規制も厳格となり、コンプライアンスの内容いかんによっては、逮捕者も出ているようです。

規制についても、顧客取引でやって良いこと悪いことが厳しくルールに付け加えられ、銀行ディーラーは、がんじがらめに縛られ、収益獲得のチャンスがほぼなくなってしまった状況です。

銀行ディーラーが外部とメールや電話でコミュニケーションしていることも、内容はフィルターに掛けられて、全てコンプライアンスによってチェックされているようです。

そんなことから、銀行は、人間のディーラーに頼らず、イーコマースと呼ばれる、いわゆるAIを使ったトレーディングにウェイトを置くようになっているもようです。

このように、銀行ディーラーが他の銀行ディーラーとの情報交換など、ほぼ完全にできなくなりましたので、ある意味では、銀行ディーラーと個人投資家との情報に、それ程の差がなくなってきているとも言えます。

更に申し上げれば、今、世界で、ポジションを持ってリスクを取っているのは、米系ファンドと日本の個人投資家ぐらいのものだと、極論ではなく言えると思います。

情報収集する方法にも工夫が必要な時代に

さて、銀行の情報の厳格管理は、欧米だけではなく、日本国内の外銀邦銀問わず行われています。

そこで、逆の不思議が起きています。というのは、情報の出所である銀行から、もう情報はほぼ完全に流出しない仕組みになっていながら、いろいろな情報が漏れている、あるいはまことしやかに流れていることです。

良い例が、顧客のオーダー(注文)状況です。いまだに、どこにオーダーがあるといった情報が流れてきますが、これは、今や銀行ディーラーが流せば逮捕につながることだけに、相当にマユツバものだと思います。

つまりは、今はやりのフェイクな(偽の)情報が意図的に流されている可能性が高いと思いますので、あまり信じない方が良いと思います。

それだけに、今や情報収集する方法も工夫することが必要です。

例えば、日本の輸出企業の売りオーダーの出し方には特徴があります。小数点以下2桁が、00、あるいは50に一番大きな売りオーダーがあり、次に20、40、60、80に、中規模のオーダーがあることは、何も情報として聞くまでもありません。輸入サイドも、ドル買い円売りのオーダー00、50が多く、それ以外は仲値を使っているようです。

仲値については、輸出企業でも採用するケースが増えており、その理由は、公示仲値のため、客観的で公正なレートだということからです。

しかし、本当に、銀行と個人投資家の立場は、ここ20年ぐらいで一変したことがお分かりいただけることと思います。そして、個人投資家のポテンシャリティー(潜在能力)は、今後更に拡大していくものと思います。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら