ドル/円は先週水曜日から3日連続で下げてきました。最初のうちは、売りが海外時間に入ると強まることから、海外勢による仕掛けかと思いました。
しかし、「そうか、もう2月末だ」と気づき、これは多分、2月末に決算を迎える投資信託(投信)のいわゆる"レパトリ(レパトリエーション、資金の本国回帰)"に伴う円買いが出ているに違いないと思うようになりました。
さらに、日本の投信の動きではないかと思ったのは、彼らは、ロンドン・フィキシングが、世界的に最も公正な値決めと解釈しているようで、日頃からロンドンタイムを好んで使っているからです。そのため、今回、ドル/円、クロス円の円買いがロンドンタイムに強まったこともあったと思います。
投信の決算当日は2月28日ですので、この一連の動きが、月末28日まで続く可能性があります。しかし、月末ギリギリまでやるというよりは、大方の部分は、既に先週末までには終わっている可能性もあり、そのあたりは、月末前日の本日や、月末当日の明日のマーケットの動向次第だと思います。
ただし、やはり期末日当日までギリギリ待つというのは、やはりリスクがあり、先週末までに大方の値決めは終わっていると見るのが現実的ではないかと見ています。
このように、相場は、季節要因あるいは企業の決算絡みで動いていることが多く、それを実際知っておくことが大事です。直近で言いますと、3月末には日本の大方の企業や金融機関の本決算を迎えます。このときもまた、レパトリの円買いが発生しやすく、ドル/円も売られやすくなります。
海外勢の中間決算もユーロとドルに影響する
海外勢でも決算絡みで、為替相場が動くことがあります。一番顕著なのが、6月末の海外勢の中間決算です。その年の年初来から積み上げてきた損益を母国通貨で確定するため、特にユーロとドルに影響を与えます。具体的には、6月初日から、例えば欧州の企業であれば、ドルを売ってユーロを買うということを結構やります。
去年がそうでしたが、ユーロ/ドルが膠着してしまい、シカゴIMMが公表する各種ポジションの中でも、ユーロ/ドルのポジションがかなり少なく、中間決算にもほとんど反映されなかったという例外的な年もあることは確かです。しかし、通常では、結構な買いあるいは売りポジションが、6月初めにはあり、6月1日から、「ヨーイドン」をするかのように、手持ちのポジションをスクエア(ノーポジション)にするように為替取引が活発に行われるのが一般的です。
なお、6月中に大きく為替が一方向に動くということは、海外勢の年初来から積み上げてきたポジションがいかに大きかったかを示します。
そして、面白いのは、6月以前には、経済情勢や注目の各国金融政策などがまことしやかに相場のネタになっていますが、6月に入ると、そうした大義名分は立ち消えとなり、それまでのことがウソだったかとさえ思うように、逆取引によってポジションは手じまいとなります。特に、ユーロ/ドルの6月1日の動きが面白く、あからさまに方向転換しており、いったいい今までの相場は何だったのかとさえ思えるほどの節操のなさです。
その他、決算関係で年間気をつけておいた方が良いのは、ひとつには、4月早々の相場で、本邦期末を過ぎて、新年度入りしますが、まだ、機関投資家や実需は、新年度の方針をまだ決めておらず、動きのない中で、投機筋だけが売ったり買ったりするため、相場がレンジ相場になりやすく難しい相場となる傾向があります。同じようなことは、10月や1月の月初でも起きることがあります。
また、決算処理で相場が動くのは、本邦勢では9月末の中間決算、米系ファンドであれば、10月初めから10月15日まで11月末決算に絡んだ、顧客の希望によるファンドの解約処理のための為替取引も顕著です。
このように、欧米勢、本邦勢の決算絡みの為替取引によって、相場が顕著に動くことがありますので、どうぞお忘れなく。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。