先週の金曜、トランプ氏は第45代米国大統領に就任しました。ある意味、このことは、今年の為替相場のスタート点を示しているものと見ており、この機会に、今年のドル/円相場の見通しについて考えてみたいと思います。

今年のドル/円はレンジ相場が長く続く

まず、今年のドル/円相場のざっくりとしたイメージですが、レンジ相場が長く続くのではないかと見ています。

ドル/円 月足

相場が、トレンド性をもって動くには、実際に一方向のフロー(資金の流れ)が必要です。このフローを創出するのは、主に投資家で、それに実需も加わります。

ここでいう「投資家」とは、政府系ファンド、年金運用機関であるペンションファンド、GPIFに代表される機関投資家、そして中央銀行などです。このように、公的あるいは準公的のお堅い人たちが投資家である以上、投資判断を下すには、かなりの時間を要し、4~5カ月ぐらいの時間を掛けることも決して珍しいことではありません。

今年の場合、やはり注目点は、トランプ大統領の施策であり、また実際になにをやったかという実績も慎重に検討するものと思われ、やはり4~5カ月ぐらいの時間を掛けて投資判断を決めていくものと思われます。

さらに、トランプ大統領が思うに任せた発言を、ツイッターなどを通して続けていると、落ち着いた投資判断もできないものと思われ、その面からも、判断に例年以上の時間がかかるものと見ています。

ということは、少なくとも、今年の6月前後、あるいはそれ以上の期間、リアルな一方向のフローは発生せず、その間、レンジ相場が続く可能性が高いと思われます。

そもそも「レンジ相場」とは?

レンジ相場とは、要するに一方向へのリアルな資金の流れがない中で、経済指標や要人発言に投機筋が、「これは買いだ」、あるいは「これは売りだ」と直感的に飛びついて、売るだけ売る、買うだけ買う相場です。

しかし、投機筋には、致命的な弱みがあります。というのは、例えば、弱い米雇用統計に直感的に「これはドル売りだ」と売ったとしても、それは単にショートポジションが膨らむことを意味しています。

そこが、投機筋の弱みです。

つまり、いったん売ったら、必ず、利食いか損切りのために買い戻さなければならないということです。ということは、いったん売ったら当分買い戻さない投資家や、輸出や輸入といった実需のような、輸出であれば売ったら売り放し、輸入であれば買ったら買い放しという訳には行きません。

この致命的な弱点のために、投機筋の相場は、上がれば下がる、下がれば上がるという往って来い(いってこい)の相場になり、延々とレンジ相場が続くことになります。

ですので、一方向に進むトレンド相場のように、順張りで長期にポジションを保有してもうけるということはできず、細かく売り買いを繰り返さなくてはなりませんし、決して規則正しい上下動をするわけではありませんので、結構難しい相場です。

今年は相場が反転しやすい年?

現状のイメージとしては、ざっくりと言って、110円から120円ぐらいのレンジで、往ったり来たりになると思います。

その間にも、まことしやかな材料が出て、急上昇したり急落する場面があると思いますが、マーケットに投機筋しかいないと判断したら、マーケットに長居はせず、さっさと利食って、相場から離れることが大事だと思います。

時間が経過すればするほど、その材料をネタに相場に参加してくるマーケット参加者は増え、そして、一方向に偏ったポジションが満杯になれば、相場は反転するしかないと見ています。

ドル/円 月足 イメージ

上図が、私のイメージする今年で、年内の大方レンジ相場が占め、その後年末にかけて下落するというものです。

2015年にほぼ1年を掛けて、高原状態を作った後、2016年にいったん99円近辺まで下落しましたが、11月の米大統領選で、トランプ氏当選から上昇し、118円を見ました。

しかし、今年は、2015円ほどの高さではありませんが、再び高原状態になり、年末頃に急落することによって、最初の山よりふたつ目の山が低い、変形ダブルトップというドル/円によく出現する形状になるのではないかと見ています。

いずれにしましても、思い込んだら、相場が反転しやすい年だと思いますので、フットワーク良く軽快なタッチでトレードすることが大事な年だと思います。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら