日本という国は、「同質社会で、全てを言わなくても、阿吽の呼吸でわかってしまう」とよく言われます。最近では、それ程阿吽の呼吸は伝わらないこともありますが、長い歴史の中で、育まれていることだけに、決してそう簡単にはなくならないと思われます。
ただし、阿吽の呼吸によって簡単に情報共有することができる代わりに、ひとつの情報を信じて疑わないところがあり、それが、日本と世界との間で認識の違いを生むことがあります。その好例は、私がニューヨークにいたときに起こりました。
日本にとっての米国と米国にとっての日本
週末に開催が予定されたるG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)では、円高誘導が決定されるという噂がまことしやかに、日本国内で広がり、マスコミもマーケットをあおったために、マーケットは大盛り上がりとなりました。こうした、一方向に考え方が偏り、信じて疑わないというところは、日本人の特性とも言えるかもしれません。
そして、土曜にG7が開催されましたので、翌日曜日に、新聞各紙を購入し、家に戻って、どれどれとすべて目を通しましたら、どの新聞にも、一行すらG7の記事がありませんでした。これが、まさに米国と日本のG7に対する比重の置き型の違いだということです。
日本にとっては、G7は大きな影響力がありますが、米国にとっては、それほど対した問題ではなく、しかも、日本にとっては、米国はすべてかもしれませんが、米国にとって日本は大勢の中の一人でしかないということです。
ただし、今回の例に挙げた時期の米国に比べれば、今の米国はそれでもまだ理解しようとはしてくれているよう思われます。
ステレオ・タイプで判断しない
ステレオ・タイプという言葉があります。その意味は、多くの人に浸透している思い込みのことで、例えば、ドイツ人は親日家など好例だと思います。
確かに、そういった面もなきにしもあらずですが、私がドイツ系銀行で働いていたときの、本国から駐在しに来ているエクスパッド(本社採用者)の日本人を見る目は、物でも見るような無表情なもので、親日家の片鱗もありませんでした。そして、元同盟国などという意識も全くありませんでした。
もちろんドイツへ行って、本当に良いドイツ人にも会いましたが、それは、ステレオ・タイプではなく、個別に付き合ってみて、相手の性格を知り、友人になりたいと思ったのに過ぎません。いずれにしても、実際、相手と接しないと本当は、分かりません。
現地に行ってみることが一番
実は、今年の目標として、中国に行ってみようと思っています。時間が取れるかわかりませんが、とりあえず、実現に向けて努力して見るつもりです。今の中国に対するステレオ・タイプでは、景気が後退していて、大気汚染がひどくて、国としても、個人としても強引でということになります。
しかし、一方で、中国の景気はいまだに堅調で、ひとびとは元気一杯という情報も入ってきています。こういうときは、現地に行ってみることが一番だと思います。特に、今後、中国の世界に対する存在感はグッと高まるものと見ています。
一方、今までの主流であった欧米ですが、ヨーロッパは、移民・難民問題や金融業の後退などがかなり深刻になってきている一方、アメリカはトランプ氏によって、今後内向きになっていくものと思われます。その結果、中国が台頭してくるのではないかと考えています。
もう、一昔前になりますが、イギリスの銀行にいたとき、シンガポールや香港に良く出張していました。そこで、感じたのは、シンガポールや香港からくる参加者は、華僑(中国から見た海外に居住する中国人)たちで、シンガポール・香港間の連絡も、電話で逐一行われ、更に大口の取引先である北京とも、頻繁に連絡を取り合っていました。
また、アジア地域の為替を統括する中国人部長は香港をベースにしながら、毎週数日は北京に滞在していました。これらの光景を目にして思ったのは、大中華圏は既に出来上がっているということです。このことに気づかず、安穏と金魚鉢の中にいたら、ドンドン世界から取り残されていってしまうと思います。
そうした、危機感から、中国行きを今考えています。
※画像は本文とは関係ありません。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。