ドル/円、今年の11月の米大統領選以来、多少の調整はあったものの、ほぼ一本調子で上昇してきています。この間の上げ幅は、既に約14円にも及んでいて、しかも上昇の勢いは衰えていません。
本来、今週はクリスマスの週であり、年末の手じまいも終わり年間でももっとも閑散となる週です。しかし、ドル/円は高止まりしており、一向に下がる気配がありません。
テクニカル的には、今年1年間掛けて、ラウンディング・ボトム(鍋底)を形成しています。そのネックラインの取り方で、この上昇トレンドのターゲット水準が変わってきます。
ターゲットの取り方は4パターン
それでは、ターゲットの取り方を確認しますと以下4例のようになります。
まず、ボトムについては、100円とします。
ネックライン(鍋の口)を112円としたラウンディング・ボトムとしますと、112円+(112円-100円)=124円となります。次にネックラインを114円とすると、114円+(114円-100円)=128円となります。さらに、ネックラインを121円とすると、121円+(121円-100円)=142円の可能性もあります。そして、もう一段、ネックラインを125円に上げると、125円+(125円-100円)=150円も単純な計算から導き出せる目標水準としてあり得ます。
今の買い圧力が強い相場では、どれも達成する可能性があると見ています。つまり、低いターゲットから順次試していき、段階を踏みながら、更に次のターゲットを試していくものと思われます。
なぜここまで円安になるのか?
しかし、なぜこんなに円安になるのでしょうか? テクニカル的に見ると、月足では、2014年から形成してきたヘッド・アンド・ショルダーが形成に失敗して急反転しています。今年形成していた100円のボトムとネックラインの125円から見ると、この観点からも、ターゲットは125円+(125円-100円)=150円になるためです。
また、ファンダメンタルズ的に申し上げますと、今の前半貿易収支が久々に黒字になりましたが、黒字転換の原因は、輸出が伸びたわけではなく原油安により輸入額が減ったためでした。しかし、ここに来て、OPEC加盟国と非OPEC加盟国が減産で同意しています。原油価格が一転して上昇を始めると、日本の貿易収支は再び赤字に転ずる可能性があります。
さらに、マーケットで今まで主導的な立場にあった欧米、特にヨーロッパ勢がコンプライアンス(法令順守)や規制により後退し、代わって違う国・地域が力を持ってきていることは否定し難いと思っています。
そして、それが誰かを、消去法で考えてみれば、中国ではないかと考えています。
"中国流"が生み出すものとは
ここで申し上げておきたいことは、「彼らのシステム(仕組み)や価値観は、欧米勢のそれとは異なっている」ことです。そのため今すぐにガラリと変わることはないにしても、徐々に中国流に代わっていくものと思われます。
例えば、中国にとっては春節(旧正月)は大事かもしれませんが、クリスマスも日本の正月も、特段彼らにとっては意味がないわけです。となると、例年、年間で一番閑散となるクリスマスの前週であろうとお構いなしでトレードしてくる可能性はありえると思います。
既存勢力と中国との間での、システムや価値観の違いは、近い将来摩擦を呼ぶことになるものと考えられます。そこは、強気で押し通す中国のこと、強引に事を運ぼうとするものと思われますが、一方、既得権益のある既存勢力も黙ってはいないでしょうから、結構もめることになりそうです。
いずれにしましても、これから、為替相場に限らず、いろいろな分野で中国は存在感を強めていくものと思われます。そうした状況下、どう日本は生き残っていけるのか、事前に十分考えておく必要があるでしょう。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。