12月4日に行われたオーストリアの大統領の決選投票では、与党のファン・デア・ベレン氏が、内外で極右として指摘されている、自由党のノルベルト・ホーファー氏を抑え、勝利を収めました。
まずは、一難が去りました。
しかし、同日、イタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、結果は否決。同投票はレンツィ首相に対する事実上の信任投票と受け止められており、首相は報道陣を前に「敗北のすべての責任は私にある」と述べて、敗北を認め、辞意を表明しました。これにより、イタリアは、政治の不安定化やマーケットへの影響も懸念されます。
「動乱の時代への移行=悪いこと」とは限らない?
いずれにしましても、このところ、今までにはなかったような、トランプ氏の米大統領選での当選や、ヨーロッパでの移民・難民の大量流入に対する拒否反応、そしてそれが故に、極右政党が支持される傾向もあり、時代は安定から動乱に変貌してきているように思われます。
しかしながら、相場の世界では、この安定から動乱の時代への移行は、決して悪いことではないと見ています。なぜなら、相場自体のボラティリティー(価格変動率)が上がるため、相場自体に躍動感が出てきます。したがって、動乱の時代であればこその大きく儲ける収益チャンスがあるのです。
ただ、逆に、大きく損する可能性もありますので、やはり、ある一定の緊張感をもって、相場に臨むことが必要です。また、いったん、相場が自分の見ている方向とは、逆に行きそうだと思えば、躊躇せずに方向転換できるだけの柔軟さが必要です。
起死回生を図る「3倍返し」とは?
私は、「3倍返しの水上」と言われていました。
相場が思惑と違えば、反対取引をすることで、いったんスクエア(ポジションなし)にするのが、基本です。しかし、それでは、自分の目論見を反省するだけで終わってしまい、損失だけが残ります。
それでは、「災い転じて福となす」ためには、どうすれば良いかと言えば、「倍返し」することです。倍返しは、既存のポジションを手仕舞うと同時に、逆方向へのポジションを持つことで、起死回生を図るものです。なお、注意しなくてはならないことは、「必ずしも儲かるとは限らない」ことです。しかし、死地に活路を見いだすために、やってみる価値はあります。
それで、私がよくやっていた3倍返しですが、まず、1倍分で、既存ポジションを手仕舞い、残り2倍分で逆方向へのポジションを持ちます。もちろん、逆方向に2倍のポジションを持つことで、絶対ではありませんが、損失を早く取り戻し、更に利益を大きく出すことは可能です。
3倍返しは、その通貨ペアのボラティリティーが高ければ高いほど、収益チャンスが増えますので、相場に勢いがあるときが狙い目です。
自分が固く信じた方向を否定して、逆方向に賭けるというのは、どうも節操がなくて、納得がいかないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、相場を生き抜いていくには、ある意味、節操のなさも必要です。
重要なのはひとつの相場観に固執しないこと
相場は、時々刻々と変化しています。それが意味することは、相場は生き物ですから、相場を形成しているいろいろな要素はどんどん変化し、しかも、消えていく要素、新しく入ってくる要素があるわけです。ですから、後生大事にひとつの相場観に固執すること自体、相場の残像を見ているのに過ぎないと思います。
つまり、見方に調整を加えていかないと、実際の相場と自分の相場観が、掛け離れてしまいます。したがって、相場の変化に自分の方から合わせていくということが大事です。
冒頭でも、申し上げましたように、動乱の時代に世界は向かおうとしていると見ています。うまく立ち回るか、立ち回らないかで、もしかすると人生自体が変わってしまうような時代になるように思われます。
全方位に油断しないことが大切です。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。