例えば、ヘッドアンドショルダーであったり、ダブルトップであったり、三山であったり、三空であったり、結構たくさんの種類があります。そして、こうしたパターンの出現は、誰もが気づくものではありますが、意外と自分しか気づいていないと思いがちです。
これは、有名チャートパターンに限った話ではなく、例えば、「過去あのときに出現したあの形状に似ている」というものも加えると、実に多くのパターンがあります。そして、あるパターンができると、そのパターンが自動的に完成後セオリー通りになるものだと思いがちです。
例えば、ヘッドアンドショールダーの右肩が完成すると、ネックライン(首元)とヘッドの高さ分ネックラインから下がるというセオリー通りになると期待しがちです。しかし、これは、相場のマーケットポジションを考えると、まずありえません。
セオリー通りになるとは限らない?
既に申し上げましたように、ひそかに多くの人が同じことを考えるために、マーケットのポジションは一方向に偏ることになります。そのため、セオリーとは違って、いったん相場は反転し、ある程度、ポジションの振り落としがあってこそ、やっと当初のシナリオ通りの動きとなることが多いです。
以下は失敗例です。
まず、背景から申し上げますと、2001年当時のジョージ・ブッシュ政権が中東に対して強硬姿勢を示したことから、ビンラディン率いるテロ組織アルカイダは、2001年9月11日に米同時多発テロを実行しましした。
それにより、ニューヨークのワールドトレードセンターや、ワシントンDCのペンタゴン(国防総省)にハイジャックされた旅客機が突っ込み、ワールドトレードセンターに至っては、ビル全体が崩壊することとなりました。
これは、世界を震撼させましたが、それ以上に、ブッシュ政権自体がパニックに陥ってしまいました。そして、他の国は、今のままのアメリカに資金を置いておくこと自体危険だということで、資金をドルの次に大きいユーロに、翌年から移動させ始めました。
資金移動を中心的に行ったのが、原油のドル建て収入のあった中東・ロシア、そして大幅な貿易黒字をドルで持っていた中国です。
彼らは、マーケットでエターナル・バイヤー(永遠の買い手)と言われたぐらいユーロ買いドル売りを続けたため、ユーロは2002年~2008年の間に6300ポイントも上昇しました。
さて、ここからが本題ですが、それだけ大量のユーロ買いが出たにも関わらず、それでもチャートパターンができることがあります。上記の図で言いますと、2004年から2006年に掛けて、ヘッドアンドショルダーの形状ができています。
つまり、どんなに、資金の流れが一方的にあったとしても、いろいろな需給関係からチャートパターンはできるものです。
これだけはっきりしたチャートパターンでしたので、多くのマーケット参加者が右肩完成後の下落を期待しました。しかし、このヘッドアンドショルダーは右肩を形成しても下がりませんでした。
チャートはマジックではない
これだけ大きなヘッドアンドショルダーですので、本来下がるものですが、下がらなかったのは、既に申し上げた、中東・ロシア・中国といったエターナルバイヤーの存在でした。
彼らのリアルな買いによって、ヘッドアンドショルダー完成後の下落を期待した多くのマーケット参加者が買い戻しを余儀なくされ、ヘッドとショルダーの高さ分の倍ぐらいの反動上げとなりました。
チャートは、決してマジックではありません。
パターンが完成すれば、自動的に期待する方向へいくという訳ではありませんので、やはりその局面での、マーケットのポジション状況を把握する必要があります。チャートの場合、同じチャートパターンを多くのマーケット参加者が話題にするようであれば、ポジションが大きく一方に偏っているものと見るべきでしょう。
さらに、チャートパターンのみならず、相場の見方が、大きく偏っていないかも、同様に観察する必要があります。このように、相場は、結局、人がやるものですから、マーケットのセンチメントがどう偏っているかを知ることは大変重要になるわけです。