一般的に膠着相場になるのは、エネルギーを放出しきったことによる
ドル/円もEUR/USDも膠着相場が続いています。
一般的に、膠着相場になる原因は、膠着相場になる前の段階で、結構一本調子の相場が続いてエネルギーを放出しきったことによります。
たとえば、ドル/円で申し上げますと、2012年2月から今年の6月頃まで、約3年半上昇を続け、その間に50円弱の上昇という大相場になりました。
原油の大幅安になり、ドル上昇の原因だった貿易赤字(ドル買い要因)が劇的に減少
これにより、上昇エネルギーをほぼ使い果たした上に、前年の2014年から原油の大幅安になり、ここ3年半のドル上昇の原因だった貿易赤字(ドル買い要因)が劇的に減少したことにより、上げにブレーキが掛かっています。
この貿易赤字の大幅減少によって、ドルの下支えがなくなってきていますので、すぐに反落するようにも思えますが、その前の3年半で50円弱も上昇したことにより、まだ上げの勢いが残っているため、高値圏での揉み合いになっています。
たとえて申し上げるなら、巨大タンカーが曲がる時、直角に曲がることは難しく、弧を描くようにゆっくりとしか曲がれません。
今のドル/円がまさにそうした状況であり、残った上昇エネルギーを放出しながら、徐々に方向転換してきているものと見ています。
この膠着相場は、近い将来相場が動き出す前兆を示唆
ただし、ご存知のように9月に入り、119円~121円のタイトな相場になってきていることには、多くのマーケット参加者を失望させているものと思われます。
たとえば、先週金曜の予想外に悪かった非農業部門雇用者数だった米雇用統計の結果にもかかわらず、下げきれず、往って来いになり、結局元のレンジに収まったことに落胆したトレーダーも多かったかと思います。
しかし、この膠着相場は、近い将来、相場が動き出す前兆を示唆しているものと見ています。
今回のレンジ相場は、今年の6月から始まったものと見ています。
最初は、124円近辺の高値圏で揉み合っていましたが、8月24日に、中国ショックを理由に116.15まで.激落した後、118円半ば~121円後半で揉み合うようになり、時間が経つにしたがって、さらにレンジ幅は狭くなり、今や119円割れ~121円台乗せまで狭まってきています。
しかし、このレンジ相場の収束(値幅の縮小)こそが、次のトレンド相場の到来が近づいていることを示しています。
個人的には、レンジ相場の上値が下がってきていることを考えれば、動き出すとしたら下げではないかと見ています。
ユーロ/ドルも、膠着度を高める
一方、ユーロ/ドルも、膠着度を高めています。
ドル/円が急落したのと同じ8月24日にユーロ/ドルは1.1713まで急騰(ドル安)しましたが、高い水準を維持することはできず、1.1100近辺まで反落しました。
そして、9月18日に1.1460近辺まで再び上昇しましたが、1.11台へ反落、そして10月2日に1.1319まで上昇後、またしても緩んでいます。
つまり、下値は1.1100近辺で止められてはいるものの、上値は段々に下げて来ています。
この形状は、テクニカル的には、上値を切り下げるウェッジ(楔型)フォーメーションであり、将来的には、下がる可能性があることを示唆しています。
このように、テクニカル的には、ドル/円も、ユーロ/ドルも下落する可能性があると考えています。
ユーロ/円はさらに下がる
それが正しければ、ドル/円とユーロ/ドルの掛け算によってできている、ユーロ/円はさらに下がるものと見ています。
ファンダメンタルズ的に、申し上げれば、ドル/円はこれまで上昇を後押ししてきた貿易収支が昨年からの原油安に伴い大幅減少しドルの下支えがなくっていること。
一方、ユーロ/ドルは、ユーロ圏の盟主であるドイツが、独自動車大手フォルクスワーゲンの不正問題、今年6月にドイツ銀行がS&P(スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ)により2段階格下げされたままになっていること。
そして、メルケル首相は「政治難民の受け入れに上限はない」と豪語し、無制限の受け入れを促したことに対して、国民やEUの他の国々から批判が高まっており、国内での同首相に対する支持率も急低下しています。
というように、実は、今ドイツが結構問題山積であり、こうした状況下、ユーロ安が進行する可能性は高いと見ています。
したがって、ドル/円下げ、ユーロ/ドル下げ、ユーロ/円下げ相場が示現するものと見ています。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。