トレーダーを長くやっていますと、相場の動きが先にあって、理由があとからついてくるということが、よくあります。
今の、ユーロ円が、好例です。
大きく見れば、2013年代から上昇を開始し。いったん120円台乗せでもみ合いネックライン形成し、そして上昇を再開しました。
しかし、その後、原油安となったことから、円売り圧力が弱まり、ラウンディング・トップ(坊主頭)を形成しました。
2015年台は、それでも高値圏を維持しました。
しかし、2016年になると原油の輸入額の大幅減少に加えて、伸びないGDPや、消費者物価も目標を達成が難しくなっており、米系ファンドはアベノミクスに失望し、特に2月頃からドル/円の売りが鮮明となりました。
それでも、下値は堅くはありましたが、ユーロ/円は、上値を切り下げ、とうとうここに来て、ネックラインの安値圏である120.00近辺まで、下げてきています。
特に、ここのところ4カ月間は、戻りも徐々に弱くなり、更に下値が徐々に下がってきており、チャート的に申し上げれば、下向きのウェッジ(三角保ち合い、さんかくもちあい)を形成しており、ほぼ完成に近づいているものと思われます。
今のところ、2013年のネックラインとほぼ同水準まで来ており、120.00近辺がネックラインの下限と見ており、これでブレイクすると、これまでのジリ下げからもっと一本調子の下げに変わるのではないかと見ています。
なぜなら、上がる過程でも100.00近辺から124.50を一気に5カ月間で上昇しているからです。
このように、チャートで見てみますと、非常に重要な局面に来ていることがわかります。
それでは、なぜかということになりますが、その時点では、まだ、深く考えなくても良いと思います。
それよりも、チャートから見て下がるということを無理せずに納得が行くのであれば、ショートポジションを持つことが大事だと思います。
ただし、120.00がしっかり割れるまでは、基本的には、戻り売りが良いのではないかと思います。
もし、120.00を割り込んでくるようであれば、今度はストップセル(売りの逆指値)が良いように思います。
なぜなら、既に申し上げていますように、上がる過程では100.00近辺から124.50を一気に5カ月で上昇したように、120.00から100.00までは、一気に下がるものと思われるからです。
要するに、ラウンディング・トップの左の柱と同様の柱が右にもできるのではないかと思っています。
そろそろ、この辺で考えられる理由をユーロ/円を構成するドル/円とユーロ/ドルに分けて考えますと、まず、ECBの追加緩和の可能性はまだあり、特に9日にドラギECB総裁の講演があり、そのあたりで、追加緩和を持ち出すと、新たなユーロ安の圧力になると思います。
しかし、たとえ追加緩和の示唆がなくても、ユーロ/ドルは、現状、結構タイトなレンジ相場にいますので、少なくとも動きは限られるものと思います。
一方、ドル/円は、アベノミクスの失敗観測の波紋が今後広がるものと思われ、アベノミクスがスタートした2012年秋からの株買い円売りが、今回失敗したことで、その反対の株売り円買いに転換するものと思われ、ドル/円は大きく売られるものと思われます。
しかも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を含め、生保など機関投資家や銀行は、この2年ほどの間に、運用難になった円債から、日本株、外債、外国株に大きく配分を替えました。
特に、外債、外国株については、たまたま為替相場が円安であったため、為替ヘッジ(ドル売り)を掛けていませんので、円高が進めば進むほど、多大な為替ロスを受けることになると見ています。
また、こうした本邦機関投資家の動向については、米系ファンドにはお見通しだと思われ、攻め立ててくるものと思われます。
なお、本日は、イエレンFRB議長の講演がありますので、注目です。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。