3月は、日本の多くの企業の本決算になり、それに伴って、レパトリが盛んに行われます。
レパトリとは、レパトリエーションの略で、資金の本国回帰と訳されていますが、もう少しわかりやすく言いますと、アメリカなど海外に投資していた資金を、国内に戻して円に換えるということです。
これを3月に多くの企業が行うため、特にドル売り円買いが大量に発生し、ドル安円高要因になるというものです。
実際、これまでどうであったか、過去3年間を、振り返ってみましょう。
まず、2018年3月ですが、3月21日から23日までの3日間で、約2円下げています。
2019年3月の場合、3月20日から22日の間の3日間で、やはり約2円下げています。
2020年3月の場合は、新型コロナウィルス感染拡大の渦中で2月、3月の相場は乱高下となりました。
しかし、それでも、安値水準の101円台からの猛烈な反発が111円台で抑えられたのが、3月23日から25日で、少なからず、ドルの上昇を食い止める役割をレパトリが果たした可能性があります。
これらから、レパトリの円買いのピークは、例年3月20日から25日頃の連続した営業日であることが推測されます。
さらに、こんな事例があります。
ちょうど今から10年前の2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。
震災発生後、アメリカのある投資会社のCEOが、「震災の影響で、日本の損害保険会社は多額の保険金を支払らはなければならず、そのために外貨資産を取り崩して円に換えなければならない(つまりレパトリ)」と発言しました。
日本の損害保険会社は否定に走りましたが、マーケットは一斉にドル売り円買いに出たため、ドル/円は82円台から76円台まで6円も急落しました。
この時、助け舟を出してくれたのが、G7(先進7カ国財務相中央銀行総裁会議)でした。
3月18日に日銀と共にバンク・オブ・イングランド、ECB、ニューヨーク連銀、そしてバンク・オブ・カナダの各中央銀行が協調してドル買い介入を実施しました。
これにより、ドル/円は急反発し、4月初めには85円台をつけるまでに上がりました。
ただし、この反発過程でも、3月22日から24日にかけて、いったん上昇を止めて横ばいとなっており、やはり本来の企業のレパトリによるドル売り円買いが、一時上値を抑えたものと思われます。
このように、レパトリは相場に対して結構な影響力があります。
今年の場合、今のところドルの買いが強い状況が続いていますが、特に22日月曜から25日木曜あたりが、レパトリのドル売り円買いが集中する可能性が大きく、十分注意する必要があると見ています。
一般に「相場」と言えば、政治・経済・金融政策をもとにしたファンダメンタルズが相場を組み立てていると思われていると思います。
それは、決して間違いではありません。
しかし、すべてではありません。
今回の3月のレパトリのように、実は、企業や金融機関やファンドなどの会計年度の始まりや新年、そして逆に中間決算や本決算に絡んだ為替取引が、相場に大きく影響を与えています。
こうした財務によって影響を受ける相場を、私の造語ではありますが、「財務会計相場」と呼んでいます。
この財務会計関連は、基本的に、年のほぼ12カ月の内の10カ月の相場に影響を及ぼしているといっても過言ではありませんので、また折々にふれてご紹介していきたいと思います。
ただし、その年々の相場事情が優先されることがありますので、あくまでも傾向であり、絶対ではありませんので、その点はご注意ください。