「値動き分析」とは、言い方は異なるにせよ、インターバンクディーラー達が日々スクリーンで見ている為替レートの変動(値動き)から、マーケットポジションやマーケットセンチメント(市場心理)、そして相場の方向性を見ているものです。
ロンドン勢も、値動きとは言わないまでも、同じような価格変動からマーケットポジションを見ていることは、ロンドンマーケットでの値動きからも分かります。
ちょっと取っ付きにくいかもしれませんが、ご理解いただけると大変な武器になるものです。
今回は、値動き分析の中でも、一番よく出現するジリ高相場の良い例となる相場展開がありましたのでご紹介したいと思います。
10月2日金曜日、トランプ大統領のコロナ感染という事態が発生し、リスク回避の円買いから、ドル/円は急落しました。
急落というのは、ロング筋がリスクから逃避するために、我先にマーケットから脱出しようと投げ売りをするために起こります。
急落はアッという間ですが、下げ止まると、事が事だけに、多くのマーケット参加者がさらなる下落を確信します。
ただし、安いところで売るのははばかられ、戻りで売ろうとします。
そして、戻る過程で、何が起きるかと言えば、ロングが投げてほぼスクエア(ポジションなし)の状態のところで売りますから、マーケットポジションは、ショートになっていきます。
そのため下がらなくなり、まず売ったマーケット参加者は買い戻します。
しかし、マーケットはベア(弱気)ですから。また別の参加者が売ってきます。
これが繰り返され、上がるのにショートが解消するどころか増えていきます。
そうして、週を越えて、5日月曜、また下げようとしたところで、トランプ大統領の退院見通しが報じられ反発しました。
しかし、上値も重いため、ジリジリとしか上がらず、むしろ、さらにマーケットは売り上がりました。
上がって105.80接近したところで、上には大きな売りがあったようで、上値が抑えられました。
6日火曜、105.80の売りで上げが止められたことにより、ショート筋は、意を強くして、新たに売り、やや下がりましたが、さらにショートポジションは積み上がりました。
7日水曜、ロンドンの仕掛けが本格化する16時30分に、頼みにしていた105.80を、ロンドン勢によってブレイクされたために、ショートのロスカットが集中し、106.11まで上昇しました。
この後、ニューヨークがマーケットに参入してくると、高い水準で戻ってきたため、値ごろ感からの売りが出て、一時105.85近辺まで下げました。
しかし、ロスカットで上がった相場は、ショートが単に解消してスクエアになるだけですので、下げきれず長い時間高止まりになるのが普通です。
因みに、高止まりとは、高い水準で横ばいになることです。
この時も、35時間、高止まりが続きました。
つまり、8日木曜は、丸まる高止まりになりました。
このようにして、きれいな右肩上がりの対角線状のジリ高が継続しましたが、35時間後、つまり今日の午前にトレンドラインをブレイクし、ジリ高相場は一服しました。
これまで、1時間足で見てきましたが、さらに4時間足で見ますと、ここまでの10月2日からの動きが、さらに大きなジリ高相場の一部であることがわかり、今回は4時間足のジリ高相場をもブレイクして一服となっています。
要約して申し上げれば、売り上がってショートになり、下げきれないと、ショートの買い戻しがでて高止まりして、ロングになると反落するというような、ジリ高のサイクルには法則性がありますので、それがわかれば、局面局面の対応は可能です。
ジリ高は頻繁に起きますので、ジリ高の仕組みについては、精通されることをお勧めします。