第2次安倍政権は、2012年12月26日から2020年9月16日まで続きました。
就任当初からアベノミクスを掲げ、相場は大幅に円安になりました。
そして、ドル上昇一服後は、円安水準を維持してきました。
それが、今回政権交代のタイミングから、円高方向に動き出したのは、決して偶然ではないものと見ています。
つまり、菅新政権は、市場の洗礼をマーケットから受けようとしているのではないかと考えています。
市場の洗礼とは、国のリーダーや中央銀行総裁が、新しく就任すると、「お手並み拝見」とばかりに市場の挑戦を受けることを言います。
市場の洗礼の好例があります。
それは、グリーンスパンFRB議長とブラックマンデーです。
後年、マエストロと市場関係者から呼ばれ、尊敬を集めたグリーンスパンFRB議長ですら、着任2ヶ月目にして、ブラックマンデーと呼ばれる株の大暴落という市場の洗礼を受けました。
大暴落のきっかけは、ドイツのブンデスバンク(中銀)がインフレ懸念から利上げをしようとしたのに対して、米国側が、ドイツに利上げの撤回を求めたことから、市場は米独の不協和音に不安を持ち暴走したためでした。
しかし、グリーンスパン議長は、間髪入れずに、市場に大量の流動性を供給したことから、被害を最小限にとどめ、そして、市場から羨望のまなざしを一手に受けることになりました。
その後、グリーンスパン議長は、前もって、市場にこれからやろうとしていることについて説明して、市場の理解を求めることに腐心しました。
このため、市場の暴走は、グリースパン議長任期中、影を潜めました。
今の例で上げましたように、市場の洗礼にうまく対処すれば、マーケットを味方につけることもできます。
しかし、対応が悪ければ、執拗な攻撃を受けることになりますので、十分な警戒が必要です。
ドル/円は、2016年の米大統領選後の上昇が一服して以降、レンジ相場が、4年近く続いてきました。
2012年から2016年までは、かなり大きく変動しましたが、その変動の反動から値幅が限られていたとも言えます。
しかし、4年間にも及ぶ値幅の収束は、相場が動き出すエネルギーを溜めてきたものと思われます。
そうしたところに、日本では政権交代というきっかけができ、しかも、ドルのサイドでは、FRBがFOMCで緩和的な金融政策を長期化したことで、米長期金利も低位を維持することになり、海外から米国への資金流入は細り、その結果、ドルは下支えを失って、下落する可能性が高まっていると見ています。
こうしたことを総合的に考えると、今回のドル安円高は、スケール大きく見ておく必要があると考えます。
つまり、相場が静から動に転換し、2012年から2016年までのような躍動感が戻ってくるものと見ています。
そして、その方向は、既に申し上げていますように、ドル安円高だと思われます。
当面は、100円を目指す動きになると思います。
100円は、非常に強い抵抗線ですので、簡単には切れないと思います。
また、特別なジンクスがあり、過去自民党単独政権下では、ドル/円は100円を割っていません。
過去、100円を割ったのは、1995年の村山自社さ連立政権下、そして2009年~2012年の民主党政権下の時でした。
どうして、そうなるかは、定かではありませんが、過去はそういうことになっています。
ただし、FRBが低金利を長期化することになると、やはり米国への資金流入は細るものと思います。
事実、日本の機関投資家の代表格である生命保険会社も、すでに今年の4月からの新年度方針により、主に米国債など外債購入から円債購入にシフトしています。
ユーロ/ドルなどは、現状いったんドル安が止まっていますが。米大統領選後には、ドル安を再開するものと思われ、ドルは全面安になるものと見ています。
今のドル/円の下落は、そのさきがけだと見ています。