レイバーデーが明けるとアメリカの学校は新学期です。
そして、マーケットでも、欧米勢にとっては、実質的な下期のスタートとなります。
一般的な欧米勢の上期は1月~6月、下期は7月~12月になるわけですが、7月、8月は夏休みのため実質的なスタートは9月であり、また12月の後半はクリスマス休暇のため実質的には12月前半までということで、下期は正味3カ月余りと短くなります。
このため、マーケットは、レイバーデーが明けると、一斉に動きだそうとしますので、注意を要します。
1月や4月と同じく、9月は期の初めですから、「(心機一転)さあ、やるぞ!」とばかりに攻めの姿勢になりやすく、結構フライング気味にマーケットに飛び込んでくるケースが見受けられます。
そういう意味では、今年も、明日から、一斉に動きが出る可能性はあります。
しかし、今年は、通常の9月とは違うと思っています。
それは、今年は、ご存じのように、11月に米大統領選があるからです。
ですから、これから11月に向けて、相場はむしろ動きづらくなると見ています。
これは、4年前の2016年の米大統領選挙の時の、ドル/円の週足チャートです。
ご覧のように、9月、10月は、11月の大統領選挙を控えて、マーケットは、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏のどちらにも、決め打ちができなかったため、約5円幅のレンジ相場になりました。
そして、11月の大統領選で、トランプ氏が選出されました。
トランプ氏が大統領になったら、ドルは暴落すると言われていましたが、蓋を開けてみたら、確かにいったんは下がりかけたものの、そこから12月にかけて、17円の上昇を見ました。
この時は、正直唖然としましたが、マーケットの下馬評ほどアテにならないものはないと思いました。
ですから、今年の9月、10月も、トランプ氏とバイデン氏にどちらにも決め打ちできない以上、レンジ相場になる可能性は高いと見ています。
その代わり、11月に大統領選が終わったら、12月に掛けて、大きく動くと思います。
今回ですが、個人的には、バイデン氏だったらドル暴落、トランプ氏になってもドル安トレンドは変わらないと見ています。
バイデン氏には、トランプ氏のようなアメリカ・ファーストを掲げて、国際政治で渡り合うだけのタフさはないと思いますし、国内を統治するリーダーシップにも欠けると見ています。
一方、トランプ氏に対して、嫌悪感を覚える人がいることも確かですが、それぐらいのあくの強さは、アメリカの政権運営には必要だと思います。
尚、4年前の選挙では、トランプ氏が選出されたことにより、17円のドル高になっており、今回も、トランプ氏が勝利すれば、ドル急騰という見方があることも確かです。
そして、もし、トランプ氏が選ばれれば、確かにドル買いが先行する可能性がありますが、たぶん一時的で、基本的にドル安トレンドは続くものと見ています。
なぜなら、8月27日のジャクソンホール会議での講演で、パウエルFRB議長は、インフレ率が長期的に平均2%となるように政策運営を行うと新方針を表明し、金融緩和を長期間維持する考えを示しました。
これにより、ドル安トレンドは、決定的なものになったと見ています。
したがい、米金融緩和が長期化する以上は、トランプ氏勝利による感情的なドル買いは長続きせず、再び、ドル安に転ずるものと見ています。
また、トランプ大統領自身、輸出競争力の観点からドル高を嫌い、ドル売り介入を考えていた時期があったほどですので、ドル安に抵抗感はないものと見ています。