「グンチャッチャ、グンチャッチャ」

なんのことかと思われるかもしれませんが、実は、今年に入って1月、2月の月別の日足のドル/円相場のパターンをイメージしたものです。

ドル/円 日足

「グンチャッチャ、グンチャッチャ」とは

まず、ドル/円の1月ですが、新年に入ってからの動きを振り返ってみますと、新年最初の営業日となった1月4日に、サウジアラビアがイランと外交関係を断絶、中国景気の先行き不透明、年末のニューヨークダウ下落などを材料に、東京タイムに日経平均が急落、これを受けてドル/円も120円を割り込み下落し、ロンドンタイムには一時118.71まで下落しました。

ドル/円は、これに始まり、1月20日には、安値115.97まで約4円以上下落しました。

この一連の下げがグンと下がったということで、「グン」です。

そして、そこから月末に向けて、調整が続き、月末前日には118円台に戻しました。

そして、1月末当日に、日銀はマイナス金利の導入を決定したことにより高値121.70まで急上昇しことで、残っていたショートも一掃されました。

この20日以降の調整局面を、「チャッチャ」と呼んでいます。

さて、それでは、2月でも言えることでしょうか。

前週末の1月29日に急騰したことを受け、2月1日の東京タイムのはじめこそ、買い気で121.44の高値をつけながら、そこから米系ファンドの売り仕掛けに急落、2月11日には110.99の安値をつけました。

つまり、1月と同じように、月前半は、「グン」と下げるということをしています。

そして、そこから114円台後半までいったんやや戻してから、もう一度2月24日には111.04までもう一度突っ込みはしたものの、そこからは月末に向けて、「チャッチャ」とばかりに戻しています。

同じリズムを繰り返す理由

つまり、今年に入り、ドル/円相場は、月ごとに、「グンチャッチャ」「グンチャッチャ」というリズムを繰り返しています。

これは、決して偶然のことではなく、銀行やファンドといった職業人ディーラーがドル/円で動きがでそうということでドル/円相場に参入してきているためだと思います。

職業人ディーラーと個人トレーダーの違いは、職業人ディーラーには、所属する組織からいろいろな縛りを受けています。

その縛りとは、月間/半期/年間ロスカットリミットや、月間/半期/年間収益目標といったものです。

そして、より具体的な縛りは、月間ロスリミットであり、月間収益目標である、つまり月間の損益、言い換えれば月次決算になるわけです。

そうすると、ディーラーが考えることは、早く儲けて、言い換えれば、前倒しで儲けて早く目標を達成するということです

そうなると、今年で言えば、注目通貨ペアであるドル/円相場にも外人勢がたくさん参加してくることになり、その結果、彼らの儲け方が、如実に月間の相場に反映されることになります。

つまり、外人勢は現在、ドル/円に対してベア(ドルに弱気)になっているため、月初から月央は、前倒しでドル/円を「グン」と下げて儲け、月後半は「チャッチャ」と買い戻して、利益を確定するということを繰り返しているものと思われます。

このように、欧米勢の月次決算(毎月)のみならず、中間決算(6月末)、本決算(11月~12月)などは相場に大きな影響を及ぼしますので無視できません。

中でも、特にユーロ/ドルに見られることですが、決算に絡んで、それまでキャリーしてきたポジションを手じまう反対売買が大量に発生し、今までの逆方向に数百ポイントの単位で、相場が動きます。

従って、この時期は、決算絡みでの反対取引だけで動くものであり、たとえ、それまでの相場展開にはっきりとしたテーマがあったとしても、この時期は、中間決算絡みの動きが優先されると割り切ることが大事です。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら