トレードにおいては、時間管理と臨機応変さの両方が必要です。今回は、実例をもとにケーススタディーをしてみたいと思います。

  • ドル/円 15分足

これは、6月11日木曜のニューヨーク市場でニューヨークダウが新型コロナウィルス「第2波」を警戒して1,800ドル以上急落し、それを受けてリスク回避の円買いが強まってドル/円が急落したことが発端となっています。

6月12日金曜の東京オープン前から、ニューヨークダウの急落に次いで日経平均はじめアジア株の下落が予想されました。そして、日本時間午前9時オープンと同時にその警戒感は実際の行動となり、ドル/円は売り浴びせられ、106.90近辺から106.59まで急落しました。

この東京オープン直後にワッと突っ込んでくるのはある意味、定例的な動きで決して驚くにはあたりません。また、その持続力がは1時間ぐらいしかないことが多く、この日も106.60前後にしっかりとした買いがあって、下げがさえぎられるとそれ以上には売り込んではきませんでした。

しかし、マーケットの大勢は、この東京9時に下がったという事実によって下げを確信し、買い戻されていく過程で売り上がり、ショートポジションは膨らんでいきました。このあたりのマーケットポジションの変化に気づくということが、実は大変重要です。

午後に入り、アジア株が買い戻されると、ドル/円もショートですから、我先にと買い戻しとなりました。その上げはショートのロスカットが玉突き状態になったものであり、臨機応変にマーケットがショートであることに気づいてロングにしている者にとっては、格好の利食い場となりました。

そしてロンドン市場に入り、いったんロンドンもアジア勢のポジションがスクエア(ポジションなし)になったのかどうかを細かく上を買ってみたり、下を売ってみたりして試していましたが、結局、このもみ合い中に新たにショートができてきたことに気づき、ショートスクイズ(ショート筋を買い上げて買い戻させて利食うロンドン勢の得意技)にでてきました。

107.20台にあったドル/円はロンドン勢によって買い上げられ、締め上げられたショート筋の買い戻しは加速し、107.55まで上昇。20時前後になると、買い上げたロンドン勢は利食いに入り反落となりました。

この20時前後というのには意味があって、つまり21時に入ってくるニューヨーク勢を前に、ロンドン勢はそれまでの利益を確定しようとします。なぜ利益を確定するかといえば、ニューヨーク勢が入ってくれば、ロンドン勢の好き勝手はできなくなるからです。

このロンドンタイムにおけるショートスクイズも、きわめて頻繁に行われるものですから、ロンドン勢がやりはじめたら、臨機応変にその流れに乗り、ロンドンの利食いタイムになる20時を前にして、いち早く売り抜いて利食うということも、生存していくためには必要な生活の知恵とも言えると思います。

この日はニューヨークに方向感がなく、主に東京、ロンドンの1日となりましたが、その間をとらえても、いくつもの収益チャンスがあり、それはある意味定石を踏んだ時間管理が必要であり、それに臨機応変に対応すれば、リスク少なく利益を稼ぎ出せることがおわかりいただけると思います。

大事なことは、この時間にはどういうことが起きやすいという時間管理と、マーケットのポジションの変化の把握、そして、ためらわずに実行する行動力だと思います。

さらに大事なことは、今回のことの発端であるニューヨークダウの急落が何を起こすかというストーリーをイメージし、それに対して現実がどう変化していくかという対応力だと思います。

このように、時々刻々に変化していくマーケットにどう乗っていくかによって、トレードの成績に差が出ることがおわかりいただけたかと思います。