「押し目待ちに押し目なし」という上昇トレンドを表した有名な相場格言があります。これは押し、つまり調整がなく、なりふり構わずトレンド方向に相場がどんどん進んでいってしまうため買うチャンスを失うということを表現しています。

確かに、上昇トレンドになって間もないうちは、どんどん一方向に進んでしまう相場になりがちです。こうした相場では「追っかけ買い」といって、高値でも買っていく気構えがないと、なかなか相場には乗りきれないことは事実です。

しかし、追っかけ買いができるのも、まだ多くのマーケット参加者が今の相場がどこまで上がるか半信半疑でポジションが軽いうちです。ひとたび皆が上昇トレンドだと確信しだすと、ポジションが短期間のうちに一方向に偏りだすため、たとえば高いところを買ってしまうと、振り落とされるリスクが高まります。

トレンド相場の場合、一日の中でトレンド方向に相場が進攻する局面と、調整する局面があります。それにより、ポジションが一時的に膨らんでもその日のうちに整理され、持続的に上昇を続けられるとも言えます。

往々にして言えることは、ニューヨークタイムにトレンド方向に進攻、東京タイムに追随、ロンドンタイムに調整となることが多く、中でも注意を要するのは、ロンドンタイムです。

ロンドン勢はデイトレが中心ですので、極論をすれば、トレンドのあるなしではなく、マーケットのポジションがロングかショートに偏っていないかについてのみ、関心があります。

そして、たとえば、マーケットが上昇トレンドを期待してロングになっていれば、そのロングを切らせることで、利益を稼ぎ出そうとします。そのために、ロングを持っているマーケット参加者が嫌がることを、徹底的にやろうとします。

ここで、例を挙げてみましょう。以下は6月3日から4日のユーロ/円の15分足です。

  • ユーロ/円 15分足

この例でも、前日のニューヨークタイムにおいて上昇トレンドが進攻し、東京タイムにおいて追随され、ロンドンタイムでいったんは買い上げられました。

しかし、上げきれずにマーケットはロングになっていると見たロンドン勢は、日本時間20時台に入ると、畳みかけるように強烈に売り、60銭ぐらい急落させ、かなりのロング筋が投げさせられました。そして、マーケットは身軽になり、ニューヨークタイムに入ると再び上昇トレンドが進攻していることがわかります。

このように、上昇トレンドが続く過程においてロングポジションを作るには、調整が入りやすいロンドンタイムのしかも日本時間20時過ぎぐらいが良いように思います。

言い換えれば、東京タイムに仕込むと、ロンドンタイムでの調整に巻き込まれ、結構苦しい目に遭いやすいということです。焦らず、エントリーのタイミングを待つことが大事です。

下値を切り上げる、上値を切り下げる

相場が上げ基調のとき、それでも下に差し込むときがあります。 しかし、差し込んだ前回の安値より今回の安値の方が浅ければ、それは上昇トレンドにいることを示しています。 これを、「下値を切り上げる」と言います。

一方、相場が下げ基調のときにそれでも上に反発するときがあります。 しかし、反発した前回の高値よりも今回の高値の方が低ければ、それは下落トレンドにいることを示しています。 これを、「上値を切り下げる」と言います。

こうした上昇トレンドでの「下値の切り上げ」や、下落トレンドでの「上値の切り下げ」を見ることで、現状のトレンドがまだ有効であるかないかは、概ね判断ができます。

注意を要するのは、上昇トレンドでの前回の差し込みよりも深く今回差し込んだときや、下落トレンドで前回の反発よりも今回の反発が大きくなったときで、それはすぐさま反転するケースは少ないですが、反転が近いことを示しています。

このような状況になった場合は、ショートのポジションを持っていれば、次の押しがあれば買い戻すのが得策ですし、ロングを持っていれば、次の反発のときにほどほどで手仕舞うことが賢明です。

意外とこの「下値を切り下げ」、あるいは「上値を切り上げ」はチャート分析をするうえで役に立ちますので、期間を変えたりしながらご覧になってみることをお勧めします。