FX上達の秘訣とは何か。単刀直入に申し上げて、それは好きになることです。それは決してFXに限らず、何にでも言えることでもあります。しかし、FXはロスカットに追い込まれたり、あるいは、ロスカットには届かなくても、マーケットの猛攻を受けてヒヤヒヤドキドキしたりすることも多々あります。そうした逆境にも耐えていけるのも、FXが好きだからこそです。
あまり漠然としたことを申し上げてもなんですから、私のディーラーになってからの生い立ちをお話ししましょう。
私は28歳のときに東京の銀座支店から、突然の辞令でロンドンに転勤となり、ロンドン支店に着任してすぐディーラーになるよう命ぜられました。
しかし、ディーリングルームに行ってみると、非常に冷ややかなマネージャーの対応に「どうしたのか」と思いました。その後、だんだんわかってきたのですが、ロンドンのディーリングルームは、ディーラー経験者の増員を東京に懇願していたところ、来たのが英語もろくに話せないうえにディーリング業務もほとんどド素人の私だったため、そのような態度になったみたいです。
それでも、増員は増員です。マネージャーは鬼軍曹と化し、ディーラー短期養成のため、毎日罵声と怒声を浴びせかけるスパルタ教育が始まりました。もう、人格など崩壊してしまうような日々で、本当に日本に帰りたいと思いました。
着任3カ月後には、スイスのチューリッヒで行われた、世界各地から集まってきたジュニアディーラーの研修にも送り込まれ、ろくに英語もできない私は、本当に頭がテンパってしまいました。それでも、半年間、毎日厳しく鍛えられているなかで、自分がFXのディーリングが好きなことを自覚していきました。
何がそんなに好きになったのかと振り返ってみると、やはり、もともと国際情勢や経済に興味があったことが大きいと思います。刻々と伝わる情報から相場を読み推理し、予想が当たったときの醍醐味は格別のものがあります。そして、トレードの場合、即それが利益という形で実感できることが捨てがたいと思います。
また、同僚やディーラー仲間との会話も、世界レベルの話が飛び交い、「世界に参画している」という実感も持てます。そんなことから、早々に、ディーリングを一生の仕事にしようと決めました。28歳の人間がそこまで決断したのですから、よっぽど好きだったのだと思います。
実はその後、ディーリング外の人から、鬼軍曹について話を聞いたことがあり、「厳しいようだけど、外部では君が頑張っていると誉めていたよ」と聞いたときには、グッとくるものがありました。
それから36年、FXと関わってきました。その間には、良いときも、悪いときもありました。実際、自分の人生は、自分が想像していた以上に振幅がありました。でも、振り返ってみると、根底には「FXが好きだ」という気持ちが連綿とあったからこそ今がある人生だと思います。
私ぐらいの年齢になると、「極めた」とか言われますが、本人は全く極めていません。未だに「このときああすればよかった、こうすればよかった」と思うことは多々あり、まだまだ修行が足りないと思っています。
たぶん、最後まで極めることはないのだろうと思っています。それぐらい、FXの世界は奥が深く、また止むことなく心理戦は続いています。
でも、年齢を重ねてくると、今まで見えていなかったことが見えてくるということもあります。ひとたび、バラバラのパズルのピースがパチンパチンと収まるところに収まって、全容が見えた瞬間、視界がいっぺんに広がり、感動を覚えることが年に何回かあります。
そうした感動を私に与えてくれたFXは、私にとっては人生になくてはならない存在だと思っています。こうした思いがあるだけに、寿命がある限り、FXマーケットに奉仕していきたいと思っています。