トレーディングを長年やってきますと、本当に「トレーディングは心技体(「心」=精神力、「技」=技術、「体」=体力)の三位一体だな」と思います。 大相場師の故是川銀蔵翁の「相場の心得その一、よく寝ること」。この言葉を、私は座右の銘にしています。
私は朝が早いこともあって、夜遅くまでマーケットを追うのではなく、ストップロスを入れて、夜11時頃には寝てしまうようにしています。 トレーディングは、健康であることが何よりも大切です。 体を壊していたり、なにか精神的に疲れていたりすると、思考能力が低下しますし、集中力や粘りに欠けてしまいます。
30代の前半に、耐久レースのような36時間ノンストップトレーディングなどという、若さに任せた過激なことをしましたが、結局は、思考能力は鈍るし、集中力もなくなり、あまりいい結果にはなりませんでした。
そもそも儲かっていれば、そんな長い時間、トレーディングをする必要はないわけなので、損していればとっとと止めて、違うことをして気分転換をしたほうが、どれだけ損失は少なくて済み、体力も温存できるかわかりません。
痛い経験をしたら、原因を究明して忘れないように
トレーディングにおける技は、いろいろやってみて、経験を積むことが大事だと思います。繰り返しの経験の積み重ねが、五感を磨いていくと思います。
面白い話を聞きました。
航空会社のパイロットは一見、国内線より国際線のほうが腕がいいように思いますが、実は離着陸の多い国内線のパイロットのほうが、腕が上だそうです。繰り返しの経験の積み重ねが、五感を磨いていくと思います。
また、痛い目に遭うことも必要だと思います。痛い経験というものは、痛かっただけに、よく記憶に残るものです。 ただし、一度失敗したら、何が原因であったかを徹底的に突き詰めて、決して忘れないこと。「二度と同じ轍は踏まないぞ」と思うことが大事だと思います。
自分の欲望と恐怖との戦いは、尽きることがありません。結局は、それをどう自分で制御するかというメンタルな部分に、トレーディングとは、究極的に行き着くと思います。 そのためには、まずはよく寝ることです。
入院時にポジションを手仕舞わなかった結果
私の失敗談です。
もう20年ぐらい前の話ですが、人間ドックで定期健康診断を受けたときのことでした。 「胃に陰がある」と担当の医師に言われ、胃の細胞を取って調べて見ましょうということになり、かなり苦しい思いをして胃カメラを飲み、該当部位の細胞を取りました。
しかし、そのとき、医師が胃の細胞を取るために胃壁をえぐりすぎてしまい、その夜は、大量の出血に見舞われることになりました。 後日聞いたところでは、体内の血液の3分の1が出たとのことでした。
それでも、2日ぐらいはフラフラしながらも銀行に出ましたが、さすがにしんどくて3日目、人間ドックが指定した病院に行き、即入院ということになりました。
この入院の段階で、私は持っていたポジションを手仕舞わなかったという大失敗を犯しました。 こうした緊急事態では、勝っていようが負けていようが、ポジションを閉じるのが鉄則です。
それを怠った私に相場は冷徹で、2泊3日の入院を終え、職場に復帰したときには、ポジションはロスカットの水準には至っていませんでしたが、大アゲンストとなっており、即損切りました。
市場自体の非常事態と同じように、自分自身に降りかかった非常事態にも、とにかくポジションをスクエア(無し)にすることが肝心です。
そして、このときに改めて思ったことは、トレーディングを行うには、やはり心技体のバランスがよく取れていることが何よりも大事だということでした。 なお、問題の胃の検査の結果は異常なしでした。