最近、米雇用統計発表後の動きが膠着しています。去る4月3日に発表された3月の米雇用統計でも、非農業部門雇用者数が、予想がマイナス10.0万人に対して、実際はマイナス70.1万人と。新型コロナウィルスの感染拡大がもろに反映された、かなり悪い数字だったにも関わらず、下げても108.25近辺、上げても108.67と膠着しました。

しかし、こうした米雇用統計発表に対する冴えない反応に、マーケット参加者のすべてが甘んじているわけではありません。しっかりと知恵と工夫を働かせているマーケット参加者の存在が、今回も改めて確認できました。

それは、米雇用統計前のロンドンタイムでのショートスクイズでした。

  • ドル/円 15分足

ショートスクイズとは、マーケットがショートになっていることに感づいて、買い上げることによってショート筋をあぶり出して買い戻させて利食う手法で、特にロンドン勢の得意技だと言えます。

今回の米雇用統計当日には、やはりアジア勢が悪い雇用統計を期待してショートになっていることにロンドン勢は気づき、16時頃の108.00近辺から買い上げ、108.30近辺で強く抵抗されましたが、21時15分頃には108.60近辺まで買い上げています。

そして、21時15分頃、利食っています。

つまり、21時30分の米雇用統計発表ギリギリまで、買い上げて、ショート筋をあぶり出して儲けていたということです。そのロンドン勢の利益追求の貪欲さには、学ぶべき点が多いと思います。

米雇用統計後の、ああいつもと同じ動かぬ米雇用統計相場と言ってしまえば、おしまいですが、ロンドン勢のこうして発表前のギリギリまで、貪欲に利益を追うところがすごいと思います。

一方、また別に、米雇用統計発表後、いやむしろ翌月曜日の東京オープン前後によく起きることが今回もありました。それは、やはり米雇用統計がかなり悪かったことで、発表後、相当ドル売りした、ビッグプレーヤー(大口の投機筋)がいたということです。金曜日のニューヨークで、遅い時間になって下げたのはそうしたプレーヤーが売ったものと思います。

しかし月曜になり、トランプ大統領が「ニューヨーク州での新型コロナウィルスの死者が減少し、良い兆候」と発言したこともあって、ショートに見切りをつけ、東京オープンを待たずして、8時頃から大量のドルの買い戻しに出て、ドル/円は、108.45近辺から109.08近辺まで急騰しました。

こうした米雇用統計の翌営業日の東京オープン前後での唐突で大々的なポジションを調整(ロスカット)するということはよく見受けられます。「いったい、なんでこんなに上がるのだろう」と思われるかもしれませんが、裏事情はそんなところにあります。

しかし、このビッグプレーヤーの「ダメならきっぱりとポジションを損切る」という姿勢には、また学ぶ点が多いと思います。自分の考えに固執することなく、ダメとなれば、思いきって閉じに入るという姿勢は、ダメなものはダメと認め、次のことを新たに考えるという意味では、非常に良いことだと思います。

このように、米雇用統計にまつわる工夫や裏事情があり、そうした側面を知っていると、米雇用統計の発表も、また違って見られることができると思います。

少なくとも言えることは、発表前の相場にしても、発表後の膠着した相場にしても、相当な額のお金が動いていることは間違いないということです。そして今一番思うことは、知恵と工夫を働かして稼げる時間を作り出すことの重要さだと思います。

一見すれば、儲からないように見えることでも、切り口を変えてみれば、立派な勝機になるということです。

人と同じことをやっていても仕方がありません。自分のオリジナルを作ることが大事になるわけです。