相場に対して発想やひらめきがあっても、それが現実になるには相当の時間がかかります。ひらめいたからと言って、すぐに相場に飛び込んでも、あまりいい結果は生まれません。

「相場のアヤ」という言葉があります。

発想とかひらめきは、自分一人だけがしていると思ったら大間違いで、同時期に多くのマーケット参加者が同じようにひらめいています。

そして、思わずほぼ同時に、皆、ポジションを同方向に張ろうとします。

そのため、一気にポジションは一方向に偏り、他愛もないことでも反動が起こり、損失を被ることになります。

これが、「相場のアヤ」の真相です。

だれが悪いわけでもなく、ひらめいて飛び込んでしまったことで、自分の身に災いが降りかかることになるわけです。

言い換えれば、発想やひらめきを持っても、ポジションを急いで持つことはなく、じっくりと相場のエントリーのタイミングを見計らうことが大切だということです。

しかし、簡単にそう言いましたが、これはなかなか難しいものです。特に、レンジ相場からのトレンド相場への転換期、相場はレンジの最終局面である収束期を迎えます。

収束期では、レンジ相場が極端に狭くなり、身動きできないぐらいになります。けれども、これがそのあとにくる躍動感に富んだトレンド相場の始まりへとつながることが良くあります。

収束したレンジ相場でひらめき、これは動くと思っても、だれも信じてはくれないような状況です。発想やひらめき自体には、まちがいがないことが多く、要は、客観的に動くタイミングを知るということが大事になります。

そこで、このタイミングを客観的に知るには、ふたつの方法があると、私は考えています。

ひとつは、複数の移動平均線の収束であり、もうひとつはボリンジャーファイブです。

  • ドル/円 月足(複数の移動平均線の収束)

複数の移動平均線の収束とは、少なくとも三本ぐらいの移動平均線が、集まってくることを言います。これらが集まってくると近い将来、相場が動き出すということを示します。

移動平均線の収束の長所は、結構前から相場が動き出すタイミングがわかります。

欠点としては、ピンポイントではわかりません。

  • ドル/円 月足(ボリンジャーファイブ)

一方、ボリンジャーファイブとは、通常のボリンジャーバンドは期間を20とか21とかにしますが、ボリンジャーファイブの場合は、期間を5、シグマを2にします。

この期間:5が、ボリンジャーファイブという名の由来です。

上下のバンドが収束し、平行になり、しかも、寄り付きと引けが近い寄せ線がでると、レンジブレイクすることが多いと言えます。

  • ドル/円 月足(過去の例)

過去の例として、2012年のボリンジャーファイブの収束後の急騰。2014年の収束後の急騰は顕著です。

そして、これまで収束してきていました。

ボリンジャーファイブの長所は、動くタイミングをピンポイントで教えてくれます。

欠点は、その時期が近づかないとわかりません。

つまり、動くタイミングが早めにわかる移動平均線の収束で前以て到来が近いことを知って心の準備をし、そしてピンポイントでわかるボリンジャーファイブでタイミングを逃さないということが重要です。

そういう意味で、複数の移動平均線の収束とボリンジャーバンドを併用することが大事だということです。

尚、こうした相場が動くタイミングを知る手法には、欠点があります。

それは、方向がわからないということです。

さすがに、神様もそこまでは面倒を見てくれないようで、自分自身の相場観に頼る必要があります。

そこで個人的に思っていることは、現在、国内からの外債投資が今年1月に過去最高の2兆円に達するなど、大量のドル買いが発生している以上、ドルは上昇する可能性が高いということです。

また、ここにきて新型肺炎の感染拡大が円安要因ともいわれるようになっていました。

そして、その時は、2月19日に来ました。

以下、2月21日金曜ニューヨーククローズ時点のチャートです。

  • ドル/円 日足

  • ドル/円 月足(複数の移動平均線の拡張)

  • ドル/円 月足(ボリンジャーファイブの拡張)

  • 水上紀行(みずかみ のりゆき)

    バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら