ヘッドラインニュースとは、新聞などの大見出しのことを言います。そして、そのヘッドラインによって動かされた相場を、ヘッドラインドリブン(Head line driven)と言います。

今年は、トランプ発言や、ブレグジット関連のニュースで動く相場が多かったことから、ヘッドラインドリブンの相場の年だと言えます。

特に、ドル/円では、5月の10連休明けから、トランンプ大統領の米中貿易摩擦や不法難民問題での発言が度重なり、まさに頻繁にヘッドラインドリブンな相場となり、8月半ばまでに、約6円50銭の下落となりました。

  • ドル/円 日足

しかし、9月以降の相場は、トランプ発言が出ても、それほどには売りで反応しなくなり、むしろジリ高展開に転じました。

要は、ヘッドラインドリブンの相場の旬が過ぎ、しかも、ヘッドラインドリブンが盛んだった頃に出来たショートポジションが、未だに買い戻されていないためだと思われます。

なぜ、まだ完全に買い戻されないかと言えば、依然としてヘッドラインドリブンな相場への警戒感はあるからだと思います。

ただし、欧米勢の本決算は12月半ばであり、それまでにショートポジションを手仕舞う必要性あると思われます。

ですから、11月28日の米感謝祭前、あるいは12月半ばからのクリスマス休暇前に向けて、相場のアンワインディング(手仕舞い)は強まるものと見ています。

こうした時は、ヘッドラインドリブンのような明らかな理由がなくて、相場が動くことが多く、いったい何があったかと首をかしげることは多いと思います。

しかし、その原因は、単にアンワインディングのタイミングを狙っているだけであって、場合によっては、たとえば、ショートの手仕舞いなのに、売りにつながるような材料でも手仕舞ってくることがあります。

つまり、相場とは、理詰めで組み立てられているものではなく、あくまでもメンタルだということです。

たとえば、5月からのドル安円高相場は、なぜ下がったのか?

それは、マーケットに下げ方向に対する油断があったからです。

ポジションが、ロングに偏っていたところに、トランプ発言などによるヘッドラインドリブンな相場が発生し、相場が総投げになりました。

下げた値幅は、確かに約6円50銭ですが、機関投資家が買い下がる中での下げでしたので、相当な投げ売りがでたと思います。

しかし、8月ぐらいになると、積極的に売りに回ることになったことにより、マーケットはショートになり、今度は、9月以降の、それほど確たる理由のない中での買戻しとなりました。

要は、メンタル的に、びっくりしてロングを投げ、確信を持って、ショートになり、そして、売り過ぎたために、反発となったというのが、5月からこれまでの相場だったと思います。

そして、現在は、まだ、買戻しを途中であり、さらに買いは出るものと見ています。

問題は、機関投資家の「下がったら買い、上がったら売り」は、まだ引き続くものと思われ、下値が抑えられたように、上値も抑えられる可能性はあると思われます。

そういう意味では、戻しても年内112円あたりが限界ではないかと考えます。

もちろん、ヘッドラインドリブンの相場が、再びやってくるものと思われますが、それを考えるには、マーケットのポジションが、ロングかショートか、いずれかに大きく偏ってきていないかを注意深く観察することです。

そして、警戒すべきことは、決して油断はしないということです。

身構えることが必要です。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら