金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループが公表した報告書を発端に、「老後2000万円問題」が話題となっています。

それでは、個人の資産運用で、FXのみならず株・商品など市場性商品で運用を試みるとしたら、どんなことに注意をすれば良いのか、私の思うところを述べさせて頂きます。

私は、常々、相場を張るという投機を行っても、それが安定的な収入を生みだすのであれば、それは投資だと考えています。

ご自分の大事な資金を増やすことをお考えであれば、投機であっても投資でなければならないと思います。

そのためには、一攫千金的な儲け方もありますし、コツコツと積み上げていく方法もあり、これは、その方の好みの問題だと思います。

ただし、それぞれの方法には、それぞれの蓄財するための守るべきルールがあると思います。

まず、一攫千金的な儲け方においては、月間ベースでは大きく儲かったり、ほとんどトレードがなかったり、しかし年間で見れば利益を残すという方法です。

この方法では、のべつ幕なしにトレードをするのではなく、自分が得意とする相場がくるのを「待てる」ことが大事です。

また、いったんとことんまで勝負したら、しばらく「やらない」というメリハリが、大切です。

大きく儲けても、その儲けを指の間から、サラサラとこぼしてしまってはなにもなりませんので、「やる時はやる。やらない時は全くやらない」というルールを持つべきかと思います。

この辺は、狩猟民族の欧米系のトレーダーが、得意としています。

次に、コツコツ積み上げて行く方法ですが、ほどほどで利食っていくため、一回あたりの儲けはそれほど大きくはありませんが、丹念にやっていくことで、利益を積み上げていきます。

しかし、一番この方法で怖いのは、コツコツ儲けても、たった一回の失敗で一瞬にして積み上げてきた儲けを吹き飛ばしてしまい、コツコツと儲ける方法だけに取り戻すのが大変なことです。

それを避けるには、「わからない時はやらない」、「間違ったと思ったらさっさとやめる」というルールを守ることだと思います。

コツコツ積み上げて行く方法は、農耕民族的な方法ですが、今申し上げましたルールを守れば、大きな凹みは回避されるものと思われます。

いずれの方法にも言えることは、「欲をかき過ぎないこと」「勝った負けたと感情的にならず、ポーカーフェイスで行く」ことだと思います。

尚、よく毎日いくら稼いで、1ヶ月の収益がいくらになるという1日あたりの平均収益で月間の収益目標を割り出すことがあるのではないかと思います。

これは、確かにコンビニや一般商店なら、毎日の平均来店客数と平均客単価がわかれば、計算できます。

しかし、トレーディングでは、毎日の予想変動幅すらよくわからない上に、損失という負の収益の時もあり、1日あたりの平均収益の積み上げで月間の収益がいくらになるかという発想は、なじまないと思います。

さらに、ご存知のように、今の時代、機関投資家ですら運用難に陥っています。

彼らが、今年の4月末に発表した積極運用先は、外国債券です。

外国債券では、高利回りを狙って、外債購入時に為替ヘッジをしないオープン外債でリスクを負って運用しています。

これからもわかることは、プロの運用者も、積極的にリスクを取らないと儲からないし、その為には、油断しない緊張感を持ち合わせないといけないということです。

したがって、個人の資産運用についても油断せずある一定の緊張感を常に持つということが、大変重要です。

大切なご自分の資産の運用ですから、守りながら攻めることが必要です。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。 詳しくはこちら