投資家の動きには、通貨ペアによって違いがあります。ドル/円とユーロ/ドルでは特に顕著であり、それを知っておくことでトレーディングの結果が違ってきます。
まず、ドル/円ですが、生保など機関投資家の新年度は4月からですが、実際方針が決まり動き出すのは、5月からです。
そして、最近の方針は、国内が運用難ですので、主に米国債など外債で積極的に運用しています。
また、従来であれば、為替ヘッジ付き外債での運用でしたが、為替ヘッジをつけると運用利回りが大幅に低下するため、外債購入時には為替ヘッジをしないオープン外債を積極的に行うようになっています。
ただし、オープン外債と言っても、全くヘッジを掛けないというものではなく、円安局面では、ドルを売って利回りを確定しています。
そのため、日本の機関投資家の投資方針は、為替がドル安円高になったら買って、為替がドル高円安になったら売って利回りを確定するというもので、そのため、前以てある程度レンジを設定して、下がれば買い上がれば売りを繰り返しています。
今年の新年度の運用が始まった5月以来のドル/円相場を見てみますと、5月後半~7月が107円~109円レンジ、8月が105円から107円、そして9月から現在が106.50~108.50といったレンジで推移している裏には、機関投資家が設定したレンジの中でほぼ相場が動いていることがわかります。
なかなかレンジがブレイクしない、あるいはブレイクしてもまた戻ってきてしまうのは、機関投資家は、投機筋と違い懐が深く、余程のことがない限りロスカットしないため、むしろ投機筋が根負けしてしまうためです。
しかも、今年の4月末に決めた、積極的にオープン外債で運用するという方針は、今年度の方針ですので、少なくとも来年3月まで続きますし、国内の運用難が続く限り、来年度もオープン外債での運用は続くものと思われます。
さらに、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、既存の為替ヘッジ付き外債を国内債扱いにできるように運用計画を変え、外債の投資枠を実質的に増やすとしており、つまりオープン外債を増やすもようです。
そうなると、今まで生保などが行ってきたようなレンジ取引がさらに拡大する可能性があり、相場が膠着化する可能性はあります。
ただし、過去にもあったことですが、人為的相場を固定化しようとすると、どうしても歪みが起き、結果的にはより大きな変動となりますので、その点は注意が必要です。
一方、ユーロ/ドルは、基本的には、新年度は1月からで、やはり方針が決まって動き出すのが、2月からが一般的です。
ユーロ/ドルにおける機関投資家とは、政府系ファンド、年金運用のペンションファンド、生保など機関投資家、そして中央銀行などです。
基本的に、資金を動かす理由には、ふたつあり、ひとつは投資妙味からの積極的な資金運用、もうひとつはある国・地域にリスクがあると判断した時、資金を他に逃避するというものです。
ユーロとドルですから、このふたつの通貨の間で良い理由にせよ悪い理由にせよ資金移動を移動させます。
よく見受けられるのが、1月の新年度を迎え、方針が決まった2月から怒涛の勢いで資金を動かします。
一番、記憶に鮮明なのは、2001年9月11日の米同時多発テロの翌年の2月から、ヒステリックになったアメリカ政府を嫌って、ドルからユーロへの大々的な資金移動が起こり、その動きは、6年間で7000ポイントの上昇となりました。
このように動かすとなると強烈で、ここのところでは、2018年2月から、EU圏の景気後退や金融緩和から、ユーロからドルへの資金シフトが起きています。
特に、最近の投資家の動きで目立つのは、戻り売りです。
投機筋がストップロスを狙って買ってくる戻りをモグラたたきのように売るため、日足のチャートなどを見ますと、上ヒゲが何本も出ており、それにより、投資家と投機筋の攻防があったことがわかります。
いずれにしても、投資家のポジションの保有期間は、投機筋に比べてはるかに長いため、結局は、投資家の勝ちとなることが多く、結局、緩やかな下落トレンドを描きながら、相場は下げて行くことになります。
このように、内外問わず、投資家の方針がはっきりした場合、相場に大きな影響を与えますので、投資家の動向には注意する必要があります。