9月2日のアメリカのレイバーデーの祝日を終え、欧米勢の実質的な下期となった9月3日に何が起きたかといえば、多くの通貨ペアで、相場反発を示す下ヒゲの長い足、つまりたくり線が出現しました。
こうした動きが、たとえば、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/ドル、ポンド/円など広範囲に見られました。
これは別の言い方をすれば、新年や新年度にあたって、「(気持ちもあらたに)さあ、やるぞ!」とばかりに、今回の場合で言えば、マーケットが一気に売り方向にポジションを傾けたために、極短期間にポジションがショートになり、そのために大きな反発となったわけです。
なぜ、それだけ広範囲に反発が見られたかですが、それは、今年の秋のテーマが絞り切れていないからだと思われます。
米中貿易協議は、結局10月に延期になりました。ブレグジットは、総選挙は却下されたけれど不透明、香港は逃亡犯条例は撤回されたけれども抗議活動は長引く気配といった具合です。
また、金融政策についても、今週、来週の各中央銀行の政策決定待ちとなっています。つまり、この秋のテーマが絞られていない現段階で、はっきりとどの通貨ペアで上げだ下げだという方向性は、まだ決められないのではないかということです。
そして、もっと大事な事は、相場にフロー(資金の流れ)を作る投資家が、まだ動いていないということです。
ここでいう投資家とは、政府系ファンド、年金運用のペンションファンド、生保など機関投資家、そして中央銀行などです。彼らは、場当たり的には動きません。じっくりと検討して、どう動くかを決めてから、実際にマーケットに出て来ます。
したがって、テーマも絞られておらず、そのため投資家の動いていない今の状況では、ポジション調整はあっても、相場は一方向には進まず、レンジ相場に終始するものと思われます。
相場によっては、「上がるかもしれない。いやいや、下げるかもしれない」と逡巡してしまう局面があります。
つまりは、非常に相場の先行きが不透明で読みづらい場面なのに、ともすると儲け損ないたくないという思い(儲け損なう恐怖)から、「行ってしまえ」とばかりに、無理矢理、売りあるいは買いで相場に入ってしまうことがあります。
しかし、私の経験上、これは、多くの場合失敗に終わります。
相場はもちろん不確実なものですが、今申し上げたような「上がるかもしれない。いやいや、下げるかもしれない」という不確実性が極めて高いときには、「やらない」という決断をする勇気を持つことが必要です。
なぜ上げそうでいて下げそうな思わせぶりなマーケット状況になるかと言えば、既に申し上げましたように、投資家のワンウエイ(一方向)の資金移動がなく、投機筋だけが売っては買い、買っては売りを繰り返している場合が多いからです。
そうした思わせぶりの相場かどうかの見極め方は、実は自分自身の中にあるように思っています。
つまり、「上がるかもしれない。いやいや、下げるかもしれない」と自分の気持ちの中で逡巡していること自体が、思わせぶりな相場となっていることを気づかせくれることが多いと、私自身の経験からは言えます。
そういう逡巡した時は、儲け損なう恐怖をあえて振り切って、ポジションを持っていれば閉じて静観することが良いように思います。
「やらない」ということは、確かに勇気が要ります。しかし、もっと、自分自身と相性の良い相場は、いずれ必ずやってきます。その時のために、体力を温存することも、トレーディングの一部だと、個人的には思っています。