ドル/円は、日本の10連休最後の日となった今年5月6日、トランプ大統領が、対中関税を引き上げると表明したことから始まり、5月23日には米中貿易協議激化。
そして5月31日には対メキシコ不法移民問題での追加関税と続き、この間だけでも、111円近辺から108円近辺までのおよそ3円の円高を見ました。
その後、6月、7月は、一時利下げ観測が強まったため107円を割り込む場面もありましたが、概ね107円から109円のレンジ相場となりました。
しかし、8月1日になると、トランプ大統領は、対中制裁関税第4弾の発動を表明したため、105円丁度に接近し、さらに8月23日には、中国が対米報復関税を表明したのに対して、トランプ大統領は関税率引き上げで応酬し、ドル/円は、週明け月曜のシドニーマーケットで一時104円45銭近辺をつけました。
こうして、5月初めからこれまでで6円強の円高を見るに至りました。
このように見てきますと、主にトランプ大統領の発言がリスク回避の円買いを呼び起こし、ドル/円は、5月から通して見れば、ダウントレンドを歩んできたことがわかります。
そして、今後についても、米中貿易協議の解決には、まだまだ時間が掛かるものと思われる上に、ブレグジットなど欧州状況やアルゼンチンの政局不安などを考えれば、100円割れも視野に入れた、さらなる円高の可能性は十分あり得るものと見ています。
これに対して、100円は徹底死守したい財務省・日銀は、相当気を揉んでいるもようです。
ただし、財務省・日銀は、他国の自国通貨安誘導に睨みを利かせるトランプ大統領はじめ米政府の手前、為替介入どころか、口先介入すら限定的にしか表立っては行っていません。
そこで、苦肉の策として、8月初めから、国民年金や厚生年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、財務省・日銀の意を受けて覆面介入するという憶測が流れていました。
そして、8月の最終週になると、毎日のように一時的ながら、ドル/円が不自然に急上昇していることが気になりました。
つまり、噂されているGPIFの覆面介入が、実際入ってきているのではないかということです。
その根拠は、こうした一時的な急上昇は、過去の財務省・日銀の覆面介入の手口に酷似しているからです。
つまり、大きく買って一気に上げようとすれば、売りは逃げてしまいますので、瞬間的には急上昇しますが、その後買い下がって、買い支えるわけでもないので、上げに勢いがなくなれば、いったん引いていた売り筋は戻ってきて売りますので、結局、下がってしまいます。
昔、財務省・日銀の覆面介入があったある日、同じような場面を、カナダ人の上司に説明したら、覆面介入じゃあ、介入をやっているよということを世間に知らしめる、いわゆるアナウンスメント効果もなく、全くやっている意味がないじゃないかと憤慨していました。
財務省・日銀としては、だれが出ているのかわからない不気味さを演出して、マーケットの売りを引かせようとしているようですが、全くそのもくろみは、マーケットには受け入れられませんでした。
ただし、財務省・日銀が覆面介入した場合は、実施した月の末に外国為替平衡操作の実施状況という報告書で過去1カ月の行動を公表しなくてはならず、手の内はばれてしまいました。
しかし、GPIFの覆面介入では、たぶん公表する必要はないものと思われ、その分、ちょっと、今までよりは、マーケットも半信半疑にはなるとは思います。
今後、円高が続くようであれば、こうしたGPIFの覆面介入の出動も増えることと思われ、警戒が必要です。
尚、こうした、瞬間的な上昇をあたかも介入しているかのように投機筋が買い上げる例も過去には結構あり、そのような投機筋の手口を、「なんちゃって」介入と呼んでいました。
今後、このようなダマシの介入も横行する可能性もありますので、注意が必要です。