8月と言えば、夏休み真っ盛りで、夏枯れ相場になると思われると思います。しかし、基本的に、例年8月に入ると、円高相場になりがちです。
それは、需給的に、ドルが売られやすく円が買われやすくなるからです。その原因は、「米国債の利金の円転」にあります。
「米国債の利金の円転」とは、ドルで受け取る米国債の利金(利息)を円転(円に換える)するということです。
昨年の8月を例にして、この利金の円転が、ドル/円相場に与える影響を見てみましょう。
例年8月15日がドル建ての利金の支払期日となりますが、信用力の高い生命保険会社や企業などは、為替予約をすることによって、前倒して8月1日から円転していきます。
これにより、昨年も、円高が始まり、8月15日の支払い期日直前まで続きました。
そして、8月15日以降は、今度は主に個人投資家が利金の入金を確認してから、円に換えました。
このドル売り円買いが、昨年の場合、8月21日まで続き、8月初めから後半までで、2円以上のドル安円高となりました。
したがって、今年の8月も同様の円買い需要が起こり、この需給要因だけでも、やはり2円強の円高を見るのではないかと見ています。
尚、米国債の利金の円転は、毎年、2月・5月・8月・11月にありますが 、8月のように顕著に円高になるのを他の月では観察することがありません。
つまり、それだけ、8月は夏休みシーズンで市場流動性が低下しているため、利金の円転が素直に相場に反映されるのではないかと思われます。
一方、昨年の8月の大きな出来事としては、米中貿易摩擦激化やトルコショックのようなリスク回避につながることも起きています。
しかし、昨年の場合は、ユーロ/ドル相場に影響し、ドル/円相場には直接的な影響はありませんでした。
ユーロドルは、8月初旬に相次いだ、米中貿易摩擦激化とトルコショックにより、約400ポイント急落しましたが、8月15日に底をつけて約400ポイント反発し、月を通してみれば、完全な往って来い相場となりました。
当時でも、リスク回避の円買いという発想はありましたが、まだ今ほどマーケットに浸透していなかったことに加え、ユーロ/ドルの相場が今に比べてずっとボラタイル(値動きが激しい)であったため、マーケットの関心がユーロ/ドルに向いていたということだと思われます。
しかし、今や、昨年よりもずってリスク回避の円買いに敏感に反応するようになっており、同様のリスク絡みの出来事があれば、円高がかなり進むものと思われ、その点からも、円高方向への警戒が必要になっています。
尚、例年8月後半に、カンザスシティー連邦準備銀行が、経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)を開催します。
ワイオミング州ジャクソンホールで毎夏開かれる同会議には、主要国の中央銀行幹部や経済学者らが参加して経済政策を討議するため、多くのマーケット参加者から注目されています。
今年は、8月22~24日に開催され、今年のテーマは「金融政策における課題」となっています。
同会議開催頃から、マーケット参加者もマーケットに戻ってくる傾向があり、市場流動性が高まってきます。
そして、9月初旬の欧米勢の実質的な下期のスタートに備えて、相場観を組み立てて行きます。
8月は、確かに夏枯れ相場とは言われますが、逆にサマーラリーとも呼ばれていますので、結構暑い夏になることも多いと言えます。
流動性が低いこともありますので、のんびりしたければポジションを持たない、ポジションを持つなら油断しないというメリハリをつけることが殊に大事な月だと思われます。