シカゴIMMポジションは、広くマーケット参加者から注目されています。

通貨先物のポジションについて、通貨別に各火曜日時点のポジションをその週の金曜日に公表されており、先物相場における投機的ポジションの偏りから、マーケット全体の投機的ポジションの偏りを類推する上で、マーケットから大変重宝がられています。

それによりますと、最新となる1月12日時点の円が、円ロング25,266枚(1枚は1千2百50万円)となり、わかる限りでも2012年以来、初めて円ショートから円ロングに転換しました。

つまり、長く続いた円安志向から円高志向に転換したということで、マーケット参加者の相場観が大転換していることがわかります。

これは、相場推移に、もちろん大きく影響を受けています。

年初早々から原油価格がさらに下落、ドル安円高が進行

2011年3月の東日本大震災の発生により、国内のすべての原発が停止し、その代替エネルギーとして液化天然ガス(LNG)の大量輸入が始まり、貿易収支は赤字に転落しました。

その後、貿易赤字によって、ドル買い需要が増えたことによって、ドルの上昇が始まり、なんと2012年2月から2015年6月までの3年4カ月で50円弱の円安となりました。

これに伴い、シカゴIMMの投機的円売りポジションも増えて行きました。

ところが、2014年7月から原油価格が大幅に下落したことで、貿易赤字は劇的に減少し、それに伴って、ドルの上値は抑えられ、少なくとも2015年は、ドル/円は、ドルの高値圏である120円~125円近辺の横ばい推移となりました。

しかし、今年に入ると、年初早々から原油価格がさらに下落したこともあって、ドル安円高が進行し、1月8日には、一時116円51銭の安値をつけました。

ドル/円 週足

こうした相場の大転換に伴い、市場のセンチメント(心理)も、円安志向から円高志向に変わったことを、シカゴのIMMポジションによって今般明らかになりました。

今回の下落相場でも奈落に落ちるような局面と出会うことが増える

ただし、にわかに円高志向になった市場参加者も多く、ある意味、ドルを売ることに不慣れな参加者が増えることになったと思われます。

そのため、戻り売りも増えるでしょうし、さらに売り急ぐ参加者も増えることから、狼狽的な売りが出ることになるものと思われます。

しかし、これまでの、ドル買いをしていれば、いつかドルは上がるという、貿易赤字下の相場つきとは違って、貿易黒字下では、上値は重いが下値も堅いという相場が続いた後、突然下落を始めるということが多く、今回の下落相場でもそんな奈落に落ちるような局面と出会うことが、これから増えるものと思われます。

つまり、相場の大転換になるものと見ています。

相場の変化に対応できるように、自らを変えていく必要

貿易赤字下でのドルの上昇は、グイグイ後ろから押し上げられ、また調整局面でも、それ程下がらなかった相場と異なり、原油がさらに下がって今後貿易黒字になっていくとすれば、恒常的なドル売りが発生し、落ちる時は、短期間にドスンと落ちていくものと思われます。

この相場つきの違いを知っているか知らないかで、相場に乗れるか乗れないかが決まってきますので、十分注意して、相場の変化に対応できるように、自らを変えていく必要があります。

相場とは、基本的に、上げ相場と下げ相場からなるサイクルです。

結構、ひとつの相場が長いこと続いたあと、別の相場へと転換していくものです。

相場の転換時は、結構戸惑うものですが、今まで通りのやり方をしても、たとえば、3連続で負けるようなことが起きれば、サイクルが変わったのだと、自覚することが必要です。

そして、速やかに新しい相場に自らを合わせていくことが大切です。

相場の転換をより早く気づけば、先行者メリットを大いに受けることが可能

相場の転換をより早く気づき、ポジションを積極的に持っていけば、先行者メリットを大いに受けることが出きます。

「相場が若い」という言葉があります。

つまり、今の相場は始まったばかりで、まだ素直なマーケットだと思います。

それだけに、相場の流れに乗った順張りで攻めることが大事です。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら