5月23日から、米中貿易協議や世界景気の不透明感を受け、リスク回避の円買いの動きが強まり、5月31日には、108円台に突入しました。
確かに、5月23日・24日と、リスク回避の円買いを理由に、ロング筋のロスカットを巻き込んで円高が進行しました。
その後も繰り返し、投機筋によって下値を試す動きが出ました。
しかし、109円台前半からは、むしろ大量の買いが出ていたことが印象に残りました。
その買いの抵抗の背景は、国内運用難から生保など日本の機関投資家がオープン外債での運用を積極化していることが上げられます。
オープン外債とは、本来外債購入のためにドルを買いますが、同時に為替リスクをヘッジするためのドル売りをするヘッジ付き外債とは違い、外債購入のためのドル買いはするもののヘッジ売りは同時には行わないものです。
これにはヘッジ付き外債にすると利回りがでなくなることもあって、機関投資家はオープン外債をすることにより、積極的にリスクをとって金利差とともに為替益も狙いに行っています。
ただし、機関投資家も、過去、為替では何度も痛い目に遭っていますので、高いところは買わず、下がったところを買ってきます。
今回も、買い始めたのは、109円台前半になってからでした。
また、オープン外債とはいえ、厳密な意味ではオープンではありません。
なぜなら、ある程度、高くなれば、ドルを売って、為替益を確定します。
こうして、下がったら買い、上がったら売りを繰り返しすことで利回りをさらに高めています。
しかし、それが反面、最近の相場を膠着させている原因のひとつとなっています。
2017年以降の月足のチャートをご覧になれば、レンジ相場が続いていることがお分かり頂けると思います。
また、これは、「動かない相場」を望んでいる、財務省・日銀にとっても好都合です。
財務省・日銀にとっては、円高に行かれれば輸出企業の業績に悪影響を及ぼす一方、野放図に円安に行かれても困ります。
なぜなら、トランプ政権から、意図的な通貨安誘導を禁じる「為替条項」を求められる可能性が高まるからです。
尚、5月28日、米財務省は、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表し、対米貿易黒字が大きい日本や中国など9カ国を「監視リスト」に指定しています。
いわば、日本は、米国からイエローカードを、前回に引き続き今回もつきつけられています。
ですので、財務省・日銀にとっては、自ら手を下すことなく、「動かない相場」を形成してくれる機関投資家は歓迎すべき存在なわけです。
さて、こうして膠着化した相場で、トレーダーとしてどう生き抜くかですが、ふたつのチョイスがあります。
ひとつ目は、機関投資家と同じことをする。
つまり、下がったら買い、上がったら売りを、良く引き付けてやるということです。
これを、キャリートレードと言います。
というのは、今、米国の政策金利が2.25~2.50%、これに対して、日本がマイナス0.1%で、ドル買い円売りのポジションをキャリーする(転がす)と、この金利差部分(スワップポイント)が懐に毎日入ってきます。
レバレッジを低くしてやれば、いわば外貨預金をやっているようなものです。
ただし、為替リスクはありますので、強制ロスカットの可能性はあります。
大事な事は、良く引き付けて買うなり売るなりするというところです。
なぜなら、中途半端なところで入ると、結構相場が行きすぎてしまい、苦しい思いをするからです。
捕まってしまうと、極めて精神衛生上良くありません。
もうひとつのチョイスは、動かない相場とはいえ、それなりには動きますので、丁寧に売り買いをする、言わば、普通のトレーディングに徹することです。
これは、ある意味、やりやすいとも言えるかもしれません。