「売るとは、どういうことですか?」とか、「売ったら下がるんですよね?」といったご質問をお受けすることがあります。
私は、次のように考えています。
「売る」とは?
まず、「売るとは?」ですが、たとえてみれば、砂浜に上げたボートのようなもので、ボートを押すと、押している限り、確かにボートは前に進みます。しかし、押すのを止めれば、ボートは止まります。
ここでミソなのですが、水面上のボートであれば、押せば惰性でさらに前に進みますが。砂浜のボートは、押している間だけ前に進みます。
そして、「売ったら下がるものか?」というご質問ですが、売り続ければ、基本的には下がります。砂浜のボートのたとえで申し上げれば、押し続ければ、その間、前に進みます。
つまり、「売る」ということは、売りのエネルギーの放出であって、水面上のボートのような惰性はありません。
売るだけ売ってしまえば、売るという行為は終了し、ポジションという、投機筋にとっては、いずれ利食いか、損切りの買い戻しという必ず行わなくてはならないポジションだけが残ります。
ここのところの、特にユーロでの畳みかけるような売りを見ていましたら、売るとはなにかについて、考えさせられます。
確かに、ユーロ圏の経済指標も悪く、心情的に売りたい気持ちは止められないと思います。
しかし、下図でもお分かり頂けますように、下からの抵抗も強いけれども、たくり線が頻繁に出ていて、ショート筋が相場を下げようと売り込んでいることがわかります。
たくり線は、実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の太い部分)が短かったり、長かったりしますが、共通して言えることは下ヒゲが長いということです。
つまり、売りから突っ込んで、押し戻されて、下ヒゲが長く残るというもので、いわゆるロング筋のロスカットの売り(投げ)のような、売り切るものでなく、売れば必ず買い戻しがセットでついてくるものですから、売りで下げるというのは、余程のパワーを使わないと落ち切らないものなのです。
ですので、いつも、ショート筋の新規売りか、ロング筋の投げ売りなのかを気にしています。
しかし、この時は、売りが引こうとしませんでした。
ユーロ圏の経済指標は、出るもの出るもの悪く、4月24日にも発表された4月の独IFO業況指数は99.2と、前月改定値の99.7から低下しました。
一方、ドルは、このところの好調な経済指標が追い風となっています。
この欧米のファンダメンタルズ格差が、素直に相場に反映されて、ユーロ安ドル高が進むのかが、ここからの大命題だと思います。
実は、この欧米のファンダメンタルズ格差は、今に始まったわけではなく、昨年の秋ごろから、叫び続けられてきました。
ところが、1.11台、1.12台での抵抗が尋常ではなく、なかなか下がらなかったところ、ここにきて、下げ始めています。
ただし、ユーロ/ドルの月足といった長いチャートで見ますと、2018年の2月をピークに、上値は着実に下げており、基本的にダウントレンドに、これまでもあったことがわかります。
今回、買いの抵抗をものともせず、潰していった先駆者に敬意を表します。
しかし、4月26日に発表された米第1四半期実質GDP・速報値が、3.2%と予想の2.3%を大きく上回り売られたものの、またしても尋常ではない買い抵抗で、安値圏でこう着となっています。
ここから、一番大事なのは、たぶんこれまでも売ってきた投資家が、「他の国・地域との比較で資金を移す場所として米国が魅力的に見えるか」ということです。
私は、とりあえず、5月一杯はまだユーロ/ドルの戻り売りだと思います。
ただし、6月は、欧米が中間決算に入り、決算に絡んで反発の可能性がありますので、少なくとも様子見が良いように思います。
7月以降については、米政府が更なるユーロ安を許容するかということもあり、その時点での状況で判断すべきかと考えます。