ロンドンは、日々、他のマーケット参加者のポジションをロスカットさせるようなトレーディングに励んでいます。よく見られるのが、ショートスクイズ(ショートポジションを買い上げて切らせる)です。
ショートスクイズ
延々と買い上げて、しびれをきらしたショート筋を買い戻させ、そして、夏時間で日本時間午後8時前後、ニューヨークオープン前に手仕舞うというお決まりのコースを、飽きずにやっています。
もう、結構昔からやられている常套手段ですが、やはり、いつになっても、買いの手が引かないとなると、どうしても攻められているショート筋は、薄気味悪くなって買い戻してしまうものです。
ただ、あくまでも作られたムードですので、午後8時前後になると、ロンドンは手のひらを返したように止めてきます。
米雇用統計の翌週月曜
また、米雇用統計の翌月曜日の東京でよく起きる現象があります。たとえば、米雇用統計にあたって、マーケットのセンチメントがドル/円でブル(ドルに強気)に結構なっていたとします。
そして、発表になると、最近の米雇用統計らしく、限定的な反応で、ガジガジの揉み合い相場となることが多いです。しかし、それでも、ブルのセンチメントは止まず、結構ロングのまま越週となります。
こういう週末にロングを持っているビッグプレーヤーは、どうしたものかと沈思黙考し、止めると決めると、翌月曜の東京オープンで一気に手仕舞ってくることが結構あります。
マーケットにしてみれば、強烈な売りに、なにが起きたかと思うと思いますが、要は、ドル/円の流動性の一番高い東京オープン直後に売れば、いくらかでも損失は薄められるということです。
引け値を作る
1時間足の引け値というのは、普通に考えれば自然に落ち着き場を見つけて出来るというふうに思われますが、そればかりではないというのが実態です。1時間足の時間帯が変わる直前の55分前後に、よくそうした戦術が出ていることが、値動きを見ていて分かります。
多くのトレーダーがチャートを重視していますので、ある意味、それを逆手に取ったような戦術ですが、勝つためにはいろいろな戦術が試行錯誤しています。
週末のスワップ益を稼ぐ
ほかに引け値を利用した戦術としては、週末の3日分のスワップ益を稼ぐというのがあります。インターバンク市場で、週末の3日分のスワップ益を稼ぐには、夏時間で日本時間木曜午前6時を挟んでということになります。
日本時間午前5時55分~59分に高金利通貨を買って低金利通貨を売り、午前6時を回ったところで、すかさず逆取引をやってスワップ益を取ろうとします。
ただ、今までこの戦術を見てきての印象は、同じ瞬間芸をやろうとするところは結構多く、結局、引け時間後に売りが殺到することから、引け時間前に買った水準より売った水準が下回っていて、うまくいかないケースのほうが多いように思っています。
今回は、ショートスクイズ、ビッグプレーヤーによる米雇用統計の翌月曜の手仕舞い、1時間足の引け値を作る、そして週末のスワップ益を稼ぐというお話をさせていただきましたが、このようにマーケットでは、いわば生活の知恵とも言える、色々な創意工夫がなされています。
その目的は、ズバリ、生き延びるためです。海には、大きな魚、小さな魚、いろいろいるのは、マーケットも同じです。そして、大きくても、小さくても、生き延びるために、知恵を絞り出しているということです。食うか食われるかの世界です。
だれが、シロウトかクロウトかなど、だれも気にはしていません。生物の世界で生存していくのにも、身を枝に見せかけたり、砂地と同系色にして身を隠したり、いろいろな工夫がなされています。
つまり、そうした知恵を絞った創意工夫がマーケットで生き延びるためにも、必要だということです。