年初来、ドル/円が急落してきました。

ドル/円 日足

こうした急ピッチな下げ相場になると、とてもどこまで下がるかわからなくなり、「売るのは怖いから買う」と言って買い下がったり、あるいは、値頃感から押し目買いに出やすくなったりする傾向があります。

しかし、実は、これらは大変危険です。

この相場どこまで下がるか、まさに「人智では推し量れないもの」

なぜなら、まず、申し上げられることは、この相場どこまで下がるか、まさに「人智では推し量れないもの」だからです。

特に、急落相場になる原因は、多くのマーケット参加者の思惑がはずれて、捕まったロング(買い持ち)ポジションの損失を出来るだけ最小限にしようと、価格などは二の次で、できるだけ早く、マーケットから早くゲットアウト(脱出)しようと売りが殺到するため、相場は、大急落となります。

こんな我先にと投げ売っている時に買い下がるのは、どこまで下がるのかわからない以前に、入るべきタイミングを誤っているとしか言いようがありません。

確かに、場合によっては、相場はVの字を描いて反転することもありますが、これは稀です。

Vの字回復は、要人発言など何らかの原因によって 手持ちのロングポジションを一気に投げられ、さらに、マーケットのポジションが倍返しされることによってショートになってこそ起きることです。

多くの場合は、下げもこのあたりまでというなんの根拠もない値頃感から買い下がって捕まっているロングポジションがこなれてこないことには、少なくとも安値圏で横ばいです。

「布団をかぶって」やり過ごそうというのは、投資の効率性の観点からも非効率

こうなると、ロングで捕まったマーケット参加者は、「布団をかぶって(見て見ぬふりをして)」やり過ごそうとします。

しかし、「布団をかぶって」も、ロングポジションであることに変わりはなく、良くても横ばい、ヘタをするともう一段下げもあり得ます。

「布団をかぶって」やり過ごそうというのは、投資の効率性の観点から見ても、非効率です。

なぜなら、動かせないポジションがあるということは、その分の証拠金が固定されてしまい、他の運用での収益チャンスを食うことになります。

従って、投資効率から考えても、「布団をかぶってやり過ごす」方式は、お勧めできません。

痛みが伴っても、アゲンスト(不利)のポジションは即刻損切ることが「好み」

それでも、なぜ、切らずにポジションを抱えてじっといるかと言えば、損切りという痛みを避けたいからです。

それでも、急落相場になると、どこまで落ちるかわからないという恐怖感から踏ん切って投げるものです。

しかし、相場が上げもしないが大きく下げもしないという保ち合い(もちあい)状態になりますと、痛みは伴わないけれど、調整に時間がかかることになります。

私個人の好みとしては、痛みが伴っても、アゲンスト(不利)のポジションは、相場観が間違っているとしたら、即刻損切ることが好みです。

なぜなら、いったんポジションを閉じて身軽になれれば、次のことが何のバイアスがかかることなく、考えられるようになるからです。

なお、相場が下がってくると、買いからしか考えられないという人が多いです。

しかし、買い下がって良い相場と、悪い相場があり、今の相場がどちらなのかを判断する必要があります。

買い下がっても良い相場は、レンジ相場と、トレンド相場でもかなり時間が経った相場です。

一方、買い下がってはいけない相場は、レンジ相場が収束してトレンド相場に入る直前から、トレンド相場の中期ぐらいまでです。

結構大きなスケールの相場に!?

今回、12月31日から始まった、ドル/円のトレンド相場は、まだトレンド相場の初期段階です。

買い場を探す以前に売り場を探す時だと思います。

昨年1年間の膠着相場から抜けだそうとしていますので、結構大きなスケールの相場になりそうです。

こうしたトレンド性のある相場では、なかなか相場に乗れないものです。

「自分でド底を売る」つもりで、売っていかないと、なかなか乗り切れるものではありません。

尚、底値をつけたかの確認は、下に突っ込んで、長い下ヒゲを出してくると、下を見た可能性が高まります。

つまり、ロング筋の大方の投げが集中したことで、長い下ヒゲが出現したものと見ています。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら