リスク回避が円買いとなった発端は、2008年のリーマンショックに遡ります。リーマンショックが発生すると、米大手証券会社は株式で甚大な損失を被りました。そのとき、その損失を穴埋めするために使われたのが当時、大きな利益を出していた円キャリートレードでした。
リーマンショックまでは、海外金利は高く、一方円金利は低かったため、円と海外金利の金利差で儲けようとする動きが活発で、それを円キャリートレードと呼んでいました。
そして、リーマンショックによって株で甚大な損失を被った米大手証券は、円キャリートレードを手仕舞う、つまり合わせ切りをすることによって、損失を穴埋めしようとしました。
これによって、円キャリートレードでは何が起きたかと言えば、もともと、円を売って高金利の外貨を買うというポジションになっていたため、それを手仕舞うということは、円買い外貨売りが、膨大な額で行われた訳です。
その上、高い金利を求めていたので、ほぼすべてクロス円でした。クロス円とは、基本的に、理論値でしかありません。
例えば、豪ドル/円と言っても、豪ドル/円のマーケットなどほとんどないも等しく、実際に、豪ドル/円でポジションが発生すれば、豪ドル/米ドルとドル/円に分解してカバーして いました。
それが、膨大な豪ドル/円の売りが出ると、もちろん、豪ドル/円では手仕舞うことはできませんので、豪ドル/米ドル売りとドル/円売りを同時に行う必要があります。
ドル/円は、主要通貨ペアですから、それでもなんとかできましたが、豪ドル/米ドルはスカスカ状態で、それこそ、150ポイント下の小さな買いを叩きに行くしかないほど流動性は枯渇してしまいました。
いずれにせよ、豪ドル/円の場合で言えば3カ月で50円急落しました。
その他では、6カ月で、ポンド/円は約90円下げましたし、NZドル/円も約30円下げました。
つまり、このリスクを回避しようとする動きから超円高になり、これをもってリスク回避の円買いが定着した訳です。
そして、今年、トランプ大統領のアメリカファースト政策の継続、米中問題、ブレグジット、イタリアの財政問題、フランスやドイツの政治・経済問題の深刻化など、リスク回避がさらに必要とされるものと思われ、円買い需要は増えるものと見ており、円高は避けられないものと思います。
なお、気をつけておかなくてはならないことは、卑近な例で言えば、先日、EUの欧州委員会が、ユーロ圏の景気見通しを下方修正したところ、リスクを回避するため円買いが実際に起きています。
つまり、日本が一切介在しないような事象に対しても、リスク回避の円買いが実際に起きているということです。
したがって、一般にドル/円のマーケットで想定する事由ではない、海外発の想定外のリスクが発生した場合、円買いが予想以上の大きさで発生するリスクがあるということです。
リーマンショック時に、ドル/円自体どれぐらい円高になったかと言えば、5カ月で約22円の円高になりました。
過去のパニック相場は、年を追うごとに、変動幅を広げてきています。
したがって、リーマンショックで経験した22円の円高を、今後起きるかもしれないパニックはそれを上回る可能性が高いと考えておくべきかと思います。
今年はパニックの多い年として、想定されるリスクを申し上げましたが、想定外のパニックが起きないという保証はなく、いずれにしても、超円高の可能性に対しては前もって身構えておくことが大事です。
備えあって、憂いなし。
※画像出典:TradingView